2026/07/30
7月20日の筆記試験、本当にお疲れ様でした。
持てる力のすべてを答案用紙に注ぎ込み、今は心身ともに疲労の極致にいらっしゃることと存じます。この過酷な試験を乗り越えたこと自体が、皆さまのたゆまぬ努力の証であり、心からの敬意を表します。
さて、大きな山を一つ越えた今、皆さまに少しだけ耳の痛い、しかし、来たる口頭試験、そしてその先の技術士としての未来のために、絶対に不可欠なお願いがあります。
「しつこいですが、皆さん、もう再現解答の作成は終わっていますか?」
「疲れているから、結果が出る11月まで一旦試験のことは忘れたい」「出来が悪かったから思い出したくもない」と感じるお気持ちは、痛いほど理解できます。しかし、あえて厳しいことを申し上げます。その「後でやろう」「発表を待ってから動こう」という思考こそが、合格の可能性を自ら手放してしまう最大の要因なのです。
今回は、なぜ今週末という「この瞬間」に再現解答を作らなければならないのか、その決定的な理由をステップバイステップで解説します。
最大の理由は、人間の記憶の不確実性にあります。極度の緊張状態と時間制限の中で、必死に手を動かして書き上げた論文の詳細な内容は、日常業務に戻った瞬間、あっという間に忘れてしまいます。
「書いたキーワードくらいは覚えている」と思うかもしれません。しかし、口頭試験で問われるのは、単なるキーワードの有無ではありません。
どのようなデータや背景に基づいてその課題を抽出したのか
解決策を展開する上で、どのような論理の筋道(ストーリー)を組み立てたのか
どのような技術的制約やトレードオフを考慮したのか
これらの細かなニュアンスや論理のつながりは、試験直後の「今」でなければ、二度と正確に再現することはできません。「鉄は熱いうちに打て」の言葉通り、記憶が鮮明な今週末こそが、価値ある再現解答を作れる唯一のチャンスなのです。
「口頭試験対策なんて、11月の筆記合格発表から始めれば十分間に合う」と勘違いしていませんか?それは大きな間違いです。
技術士試験の最終関門である口頭試験は、あなたが記述した筆記試験の答案内容を基に実施されます。全員が細かく突っ込まれるわけではありませんが、我々の経験則では、およそ10人に1人程度の確率で、筆記試験の記述内容について直接質問を受けます。
もし、あなたがその「1人」に当たってしまったらどうなるでしょうか。 試験官はあなたの論文のコピーを手元に置いて質問してきます。それに対して、4ヶ月も前に書いた内容をうろ覚えのまま、矛盾した説明や曖昧な返答をしてしまえば、「本当に自分で深く考察して書いたのか?」「自身の業務や論理を的に説明する能力(コミュニケーション能力)が不足しているのではないか」という致命的な疑念を抱かれかねません。
不要な緊張を生み、口頭試験で失敗する最大の原因は、この「自身の書いた内容の把握不足」という準備不足にあるのです。
毎年、11月の合格発表直後に、スタディングの受講生さんからこのようなご相談が後を絶ちません。
「先生、不出来だと思って諦めていたのに、合格していました!でも、再現解答を作っていなくて、論文に何を書いたかほとんど覚えていません。どうしたらいいでしょうか?」
技術士試験の採点基準は、受験生が考えるよりもずっと多角的です。自分では失敗した、文字数が足りなかった、題意を外したかもしれないと思っていても、コンピテンシー(問題解決や評価など)の骨格がしっかりと伝わっており、合格ラインに達しているケースは決して珍しくありません。
勝手な自己評価で準備を怠り、合格という千載一遇のチャンスを目の前にして慌てふためく。これほど勿体ないことはありません。合格発表までの期間は「結果待ち」ではなく、合格していることを前提として次の口頭試験への段取りを組む期間なのです。
苦痛を伴う作業かもしれませんが、疲れた頭をもう一度動かして書き出した再現解答は、未来のあなたを助ける最強の投資になります。
書き出した論文を改めて読み返すことで、「この部分はもう少し具体的なデータを使って肉付けできたな」「この課題設定の切り口は上手くいった」など、自身の論文の強みと弱みを客観的に分析できるようになります。
もし弱点(論理の飛躍や観点の漏れ)が見つかれば、口頭試験で「筆記の時点では〇〇の視点が不足していましたが、現在は〜と考えています」と、前向きに補足説明をするための完璧な対策を練ることができます。強みは自信を持ってアピールする材料になります。再現解答がない状態では、この建設的な振り返り(評価)すら行えないのです。
完璧な文章で復元しようとしなくて構いません。箇条書き、キーワードの羅列、論文の骨子(アウトライン)だけでも十分です。とにかく「形にして書き出す」という行為そのものが、あなたの記憶をロックするために重要なのです。
今週末の少しの頑張りが、4ヶ月後の口頭試験会場で、自信に満ち溢れたあなたの姿を創り出します。
社会人の勉強は「段取り八分」です。筆記試験という大きな壁を乗り越えた今、最後の仕上げとして、あなた自身の可能性を信じ、この週末に「再現解答」を完成させましょう。皆さまの熱い闘いは、まだ終わっていません。
再現解答ができたら、まずは一息つきましょう
「なんとか箇条書きで書き出したけれど、これで再現として成り立っているか不安だ」という方は、ぜひスタディングの機能を活用して記録に残しておいてください。
11月に笑顔で口頭試験対策のスタートダッシュを切るために、今できる最善の段取りを一緒にこなしていきましょう。
| 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
『講師匠習作の技術士応援ブログ』は、スタディング受講者様へお送りしたメールマガジンの内容をウェブ用に一部抜粋・編集して掲載しております。
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