2026/06/18
技術士第二次試験の筆記試験まで残りおよそ一月、いよいよ直前期のラストスパートに入るタイミングですね。
今回のテーマである「解決策としてのDXやIoT」は、多くの受験生が論文に書く大本命のキーワードです。
しかし、残り一月のこの時期だからこそ、キーワードの表面的な羅列を脱し、技術士にふさわしい「論理の深さ」と「誠実さ」を答案に吹き込む必要があります。
この直前期、必須科目Ⅰや選択科目Ⅲの解決策を記述する際、多くの受験生が頼るキーワードがあります。それが「DXの推進」や「IoT・AIの活用」です。人手不足の解消や生産性向上の解決策として、これらは非常に強力で、現代の技術士試験においても必須の視点です。しかし、ここで試験委員の目を厳しく光らせる「罠」があります。それは、これらを何でも解決できる「魔法の杖」のように書いてしまうことです。
今回は、残り一月で答案の質を劇的に高めるために不可欠な、「解決策のブラックボックス化」を防ぐ技術者としての誠実な論理構成について、解説します。
「AIを導入して現場を効率化する」「IoTセンサーを活用して維持管理を高度化する」。これだけで終わっている解決策です。技術士の試験委員が求めているのは、専門用語の見せびらかしではありません。何を(どのようなデータ・技術を)どのように(どんな手順や工夫で)どうやって要求事項(目的)を達成するのかこの具体的なプロセスが抜けたままIT用語を並べるだけでは、「中身を理解せずに、ただ流行りの言葉を使っているだけだ」と見抜かれ、専門的学識や問題解決能力の評価は「不可」となってしまいます。技術の仕組みをブラックボックスにしたまま論文を構成してはならないのです。
今持っているITキーワードの「解像度を上げる」ことです。論文にDXやIoTを盛り述べる際は、必ず「5W1H」を意識して、1ステップ踏み込んだ記述を徹底してください。
抽象的な記述(NG例):
「IoTセンサーをインフラ施設に設置し、維持管理の効率化を図る。」
具体的な記述(OK例):
「主要なインフラ施設に振動・歪みセンサーを設置する。収集したデータをクラウド上でリアルタイム解析し、異常の兆候を早期に検知する。これにより、従来の定期点検を状態監視型保全へと転換し、維持管理の効率化を図る。」このように、「センサーで何を測り、それをどう処理して、どう保全に活かすのか」という一連の技術的因果関係を明確にすることが、技術者としての「誠実さ」であり、試験委員に伝わる論理です。
AIや自動化システムに頼りすぎると、現場の技術者が「なぜシステムがその判断を下したのか」という動作原理を理解しないまま運用するリスクが生まれます。これがまさに「技術のブラックボックス化」という新たなリスクです。
万が一、予測不能な現場状況の変動(異常気象や地盤の急変等)が起きた際、システムが硬直化してトラブル対応の遅れを招く懸念があります。ここまで見越した上で、「デジタルと並行して現場のOJTによる技能伝承やアナログなバックアップ体制を整備する」という対策をセットで示す。これこそが、コンピテンシーである「評価」と「技術者倫理」を同時に証明する、合格ラインの答案です。
一文を50文字程度の短文にまとめ、結論を先に述べる「一文一義」の原則を、今一度あなたの論文練習に徹底してください。
丁寧すぎて長い文章は、それだけで論理の透明度を下げてしまいます。わからないことを知らないと認め、自分が扱える確実なデータと技術のプロセスを、地に足の着いた言葉で論理的に記述する。その実直なエンジニアとしての姿勢が、必ず試験委員の信頼を勝ち取ります。残りの期間、自分が書く解決策の「中身」をステップバイステップで研ぎ澄ませていきましょう。その誠実な努力の先に、技術士の栄冠が待っています。
「自分の書いたDXの解決策が具体性に欠けていないか」「リスクとのつながりが弱い気がする」と悩んだときは、一人で迷わずスタディングの添削を頼ってください。試験委員に「これなら現場を任せられる」と思わせる明確で分かりやすい文章へ、最後の仕上げをしていきましょう。
| 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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