2025/11/27
この「資質能力(案)」は、単なる理想論ではありません。実際、技術士第二次試験の出題や評価も、この7つの要素をベースに設計されています。
筆記試験では、専門的学識・問題解決・マネジメント・評価が中心に問われ、口頭試験では、コミュニケーション・リーダーシップ・倫理が評価の焦点になります。
つまり、合格とは「この7項目を体現できているかの証明」なのです。
では、これをどのように学び、日々の仕事や試験勉強に落とし込むべきでしょうか。
まず意識すべきは、「専門的学識」と「問題解決力」は対になっているということです。知識を蓄積するだけでなく、現場で起きる課題を論理的に整理し、背景・要因・影響を構造的に分析する。これが技術士的な思考の第一歩です。
次に「マネジメント」と「評価」です。PDCAサイクルの中で成果を検証し、課題を抽出し、改善策を提案する。これは、単なる管理職のスキルではなく、技術を成果へと変えるプロセス設計力です。論文試験でも、課題設定→原因分析→改善提案→効果評価という構成が求められるのはこのためです。
「コミュニケーション」と「リーダーシップ」は、試験よりもむしろ実務の中で磨かれます。自分の意見を“伝える力”だけでなく、他者の意見を“聴く力”、さらに多様な立場を調整する“橋渡し力”が技術士の信頼を高めます。チームの中で意識的にこの役割を担うことで、自然と資質は育ちます。
最後に「技術者倫理」。これは最も地味でありながら、最も重要です。倫理のない技術は、社会を破壊します。環境保全や安全確保への姿勢、法令遵守への意識は、試験の答案にもにじみ出ます。正確さより誠実さを優先する技術者であることが、技術士の品格です。
文部科学省の資料では、これらの資質を持つ技術者が「遅くとも35歳程度で技術士として自立していること」が期待されています。つまり、若手技術者のうちに“自分の成長軸”としてこれらの7項目を意識し、日々の業務を通じて磨き続けることが大切です。
また、この文書の末尾では「十分な継続研さん(CPD)を行うこと」が強調されています。技術士資格を取得した後も、学び続け、自己を更新し続けることが求められます。
技術は変化し続け、社会の課題も進化します。その中で、学びを止めた技術士はすぐに時代に取り残されます。
まとめると、「技術士に求められる資質能力(案)」とは、合格の条件であると同時に、生涯にわたる成長の指針です。
試験勉強の目的は、資格を取ることではなく、「社会に信頼される技術者として成長すること」です。
その第一歩が、このコンピテンシーを理解し、自分の行動に落とし込むことなのです。
| 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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