2025/11/20
文部科学省の技術士分科会がまとめた「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー(案)」は、今後の技術士制度の根幹をなす重要な指針です。ここで示されている資質能力とは、単なる知識や経験ではなく、「技術士として最低限備えるべき行動能力・判断力・責任意識」を体系化したものです。
背景には、技術の高度化・多様化があります。分野を超えた課題が増える現代において、専門知識だけでは複雑な問題を解けません。社会的視点を持ち、他分野と協働し、倫理的判断を下せる“総合的な技術人”が求められているのです。 この文書は、国際エンジニアリング連合(IEA)が定義する「Professional Competency(専門職としての能力)」を踏まえており、技術士が世界標準で評価されることを意識しています。
ここでは、7つのコンピテンシーを順に見ていきましょう。
第一は「専門的学識」です。
これは技術部門ごとの専門知識だけでなく、国内法制度や社会・自然条件を理解し、実務に応用できる力を意味します。単なる知識の暗記ではなく、現場や政策と結びつけて判断できる力が求められます。
第二は「問題解決力」です。
複合的な課題を明確化し、背景要因を分析し、相反する要求(安全性・経済性・技術性など)を調整しながら合理的な解決策を導く力です。ここでは、論理的思考とリスク分析の双方が不可欠です。
第三は「マネジメント能力」です。
計画から実行・検証・是正までのPDCAを回し、品質・コスト・納期・リスクを最適化する。プロジェクトを動かす立場の技術士として、単なる実務者ではなく“指揮・調整者”としての視点が必要です。
第四は「評価力」です。
成果物そのものの品質だけでなく、社会的波及効果までを評価し、改善に結びつける力です。エンジニアリングの結果を“社会にとっての価値”として見直すことが、この能力の本質です。
第五は「コミュニケーション能力」です。
上司・同僚・クライアントとの明確な意思疎通はもちろん、海外業務において文化的多様性を理解し協調できることも求められます。技術を社会に伝える力が、技術士の信頼を形づくります。
第六は「リーダーシップ」です。
多様な利害関係者の間で合意を形成し、明確なビジョンを示して導く能力です。単に上位職に就くことではなく、技術的判断に基づいて現場をまとめる力が求められます。
第七は「技術者倫理」です。
公衆の安全・健康・福祉を最優先にし、環境への影響を予見し、法令を遵守し、責任を明確にする。倫理は、技術士の資格を支える“信頼の根幹”です。
| 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
『講師匠習作の技術士応援ブログ』は、スタディング受講者様へお送りしたメールマガジンの内容をウェブ用に一部抜粋・編集して掲載しております。
特典1 ![]() 合格ノウハウを公開! 受験生必見の合格セミナー さらに「必勝合格法」冊子付! | 特典2 ![]() 論文対策のポイントを伝授! まずはここから!初めて論文対策をする方に手法を動画で紹介! | 特典3 ![]() 添削課題のイメージがわかる! 添削課題(サンプル版)を無料で確認できる!有料版では16部門に対応! |