2025/08/21
先週からの続きです。
今回は社会科学の本を3冊紹介します。
安宅和人著 『イシューからはじめよ』(ビジネス書?)
ユヴァル ノア ハラリ著 『サピエンス全史・上下』
スティーブン ピンカー 『人はどこまで合理的か・上下』
1. 安宅和人著『イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」』
エンジニアに伝えたいポイント:
技術士二次試験では、「何を課題とするか」「本当に解くべき問題は何か」という問いに直面します。本書は“与えられた課題をとにかく解く”のではなく、「そもそも、それは本当に解くべき重要なイシューか?」と立ち止まって考える姿勢の大切さを説いています。
イシューとは、「根本的かつ決着のついていない重要な問題」のこと。例えば、複数の技術的選択肢の中から本質的な選択肢を絞り込み、どれを追求すべきかを見極める――まさに技術士試験の論文作成や現場の課題解決そのものです。
本書の特色は、
まずイシュー(=本質的な課題)を選び抜く方法
ストーリーライン(筋道)や絵コンテ(全体像)を事前に描くことで、無駄な作業を減らす手法
検証可能性や「犬の道」(やみくもな努力)の回避
など、知的生産の効率と質を大きく高めるための具体的なフレームワークを学べる点です。
技術士試験の現場で活かすなら:
論文や業務の際、「この問題は本当に取り組む価値があるのか」「全体像はどうか」「アウトプットの筋道は明確か」を自問自答する習慣をつけましょう。無駄な努力や膨大な資料作りを避ける“本質思考”は、時間が限られる実務・試験の両方で極めて有効です。
2. ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』
エンジニアに伝えたいポイント:
『サピエンス全史』は、単なる人類史ではありません。技術、組織、社会の変化の本質を「なぜ人類は協力できるようになったか」「なぜ進化したのか」という観点からひも解きます。
本書が強調するのは、“虚構を語る力”が巨大な協力や制度、イノベーションを生み出したという事実です。例えば、国家や企業、貨幣、宗教といった「みんなで信じるフィクション」が、テクノロジーや社会を前進させたと論じています。
また、「認知革命」「農業革命」「科学革命」の三段階を軸に、
社会・組織のダイナミクス
技術革新とそのインパクト
世界の一体化・グローバル化
といったテーマを壮大なスケールで描いています。
技術士試験の現場で活かすなら:
「なぜ制度やルールが生まれ、どのように社会や技術が進化してきたのか?」という視点を持つことで、技術課題の背景や社会的意義をより深く考察できます。論文作成やプレゼンテーションで“なぜそれが大事なのか”を語る力が強化され、審査員に伝わる説得力の源泉になります。
3. スティーブン・ピンカー著『人はどこまで合理的か(上・下)』
エンジニアに伝えたいポイント:
本書は「人間の合理性とは何か」「なぜ私たちは時に合理的に、時に非合理的に判断してしまうのか」というテーマを、心理学や行動経済学の知見から丁寧に紐解きます。
ピンカーは、
人間は“合理性の道具”を持つが、同時に認知バイアスや感情、社会的影響によって判断がゆがむことも多い
論理・批判的思考・確率・統計・ゲーム理論などのツールが、非合理の罠を回避し、より良い意思決定を導くことができる
合理的思考は個人だけでなく、社会全体の意思決定や組織運営にも大きな影響を与える
と述べています。
上巻では、人間の思考がどのように進化してきたか、非合理な判断がなぜ生まれるかを解説。下巻では、意思決定理論やゲーム理論など、実務や社会問題解決に役立つツールの紹介と、その具体的な活用方法を掘り下げます。
技術士試験の現場で活かすなら:
「なぜ自分や他人が誤った判断をしてしまうのか」「より良い意思決定をするにはどんな理論やツールが使えるか」を意識することは、設計やマネジメント、問題解決の場面で極めて有効です。論文や面接で「合理的な検討」「合意形成」「リスク評価」といった項目を問われるとき、本書の知見が役立つでしょう。
技術士二次試験は、単なる知識試験ではありません。課題設定力(=イシュー発見)、技術や社会の本質を見抜く洞察、そして合理的な意思決定力・コミュニケーション力が問われます。
『イシューからはじめよ』は、「本当に重要な問いを立てる力」
『サピエンス全史』は、「大局的な視点と社会の構造を読み解く力」
『人はどこまで合理的か』は、「バイアスを超えて合理的な意思決定を行う技術」
これら三冊は、知識だけでなく「考え方」や「視野」を広げ、試験にも実務にも役立つ知的武器となります。
自分の思考や課題設定、議論・説明の深さを一段高めるために、ぜひ手に取ってみてください。
![]() | 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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