2025/08/07
長い試験対策期間、お疲れさまでした。
筆記試験の結果発表まで3ヶ月あります、今から口頭試験対策は少し早いでしょう。
8月、9月は家族サービスを含めて体と頭を休めつつ、技術士になったあとのことも考えて読書期間にすることをお勧めします。
エンタメ系の小説でも良いのですが、せっかくなら科学や社会あるいは人間について深く考えさせられる本を読んでみませんか?
今回から全部で3回、人文科学、社会科学、自然科学の良い本を紹介します。
今回は人文科学の本を3冊紹介します。
梅棹忠夫の「文明の生態史観」
マックス・ウェーバー「職業としての学問」
ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」
です。
です。
1. 梅棹忠夫『文明の生態史観』
まず最初に紹介するのは、梅棹忠夫による名著『文明の生態史観』です。
この本は、日本を含むユーラシアの文明を「東」と「西」という大きな枠組みで捉え直し、気候や地理条件、さらには人間の生き方そのものがどのように文明の発展に影響を与えたかを論じています。
従来の「西洋中心史観」とは異なり、アジア的な視点から世界を見直すことで、日本やアジアの文明的価値を再評価しようという試みが特徴です。
たとえば、なぜ日本では「家族」や「村」などの集団が社会の基礎となるのか、ヨーロッパ型の「都市市民社会」とどこが違うのか、そういった問いに対して、気候や生態環境という切り口から論じています。
専門用語も多いのですが、著者のユーモアと知的好奇心に満ちた筆致により、決して堅苦しくはありません。
技術士試験で「社会の全体像」や「長期的な変化」を問われたとき、こうした文明論的な視点を持っていると、より深い答えや自分なりの意見を構築する助けになります。
また、日本という国のあり方や「なぜ日本はこうなっているのか?」という根本的な問いを持つ人には強くおすすめしたい一冊です。
2. マックス・ウェーバー『職業としての学問』
次にご紹介するのは、ドイツの社会学者マックス・ウェーバーによる『職業としての学問』(岩波文庫など各種訳あり)です。
この本は、1917年の講演録であり、「学問とは何か」「研究者とはどうあるべきか」「社会における知の役割とは何か」を論じた古典的名著です。
ウェーバーは「価値中立」「合理化」「専門化」といった近代社会の特徴を徹底的に分析し、学問が果たすべき役割や、研究者が直面するジレンマについて語っています。
技術者や研究職に進む人にとっては、「なぜ自分は知を追究するのか」「自分にとって仕事とは何なのか」という根源的な問いを考え直すきっかけになるでしょう。
たとえば、ウェーバーは「学問とは、職業として選ぶほどに苦しく、報われない時期もある。しかし、知への情熱がなければやっていけない」と述べています。
これは、合格後に待ち受ける「技術士としての使命」や「自分の専門性をどう社会に還元するか」といった課題にもつながるメッセージです。
今、日々の仕事に行き詰まりや迷いを感じている人にも、ヒントを与えてくれる一冊です。
3. ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』
三冊目は少し毛色が違いますが、ロシア文学の金字塔、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』です。
この小説は、「人間とは何か」「正義とは何か」「信仰とは何か」といった究極の問いを、多様なキャラクターと壮大な物語の中で徹底的に描き出しています。
物語は父親殺しという事件を軸に、三兄弟(ドミートリー、イワン、アリョーシャ)と、その父フョードル・カラマーゾフを中心に展開します。
それぞれの兄弟は「情熱家」「理知的懐疑主義者」「信仰家」という異なる個性を持ち、彼らの葛藤を通して、善悪や人間の弱さ、そして社会の矛盾が浮かび上がります。
ドストエフスキーの小説は、単なる娯楽ではなく、読む者の「人生観」や「価値観」を根本から揺さぶります。
技術者にとっても、「合理性」や「効率性」だけでは測れない人間の本質、そして社会や仕事の現場で直面する複雑な問題について深く考える契機となるでしょう。
いずれの本も、すぐに実務に役立つ「ノウハウ本」ではありませんが、技術士として社会に出ていく前に「人間とは何か」「社会とは何か」「自分は何者か」といった根源的な問いと向き合う機会になるはずです。
「知の旅」は、一生続くものです、そのための継続研鑽です。
合格発表までの3ヶ月間、「自分を深める」読書の時間を持つことで、次のステップに向かう自信や視野の広がりを感じられるでしょう。
ぜひ一冊、手に取ってみてください。
『文明の生態史観』
『職業としての学問』
『カラマーゾフの兄弟』
![]() | 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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