2025/07/31
技術士筆記試験、誠にお疲れ様でございました。
持てる力のすべてを答案に注ぎ込み、今は心身ともに疲労の極致にいらっしゃることと存じます。
この過酷な試験を乗り越えたこと自体が、皆様のたゆまぬ努力と深い専門知識の証であり、心からの敬意を表します。
さて、大きな山を一つ越えた今、皆様に少しだけ耳の痛い、しかし、来たる口頭試験、そしてその先の技術士としての未来のために、絶対に不可欠なお願いがあります。
「しつこいですが、皆さん、もう再現解答は出来上がっていますよね?」
この問いかけに、ドキッとした方もいらっしゃるかもしれません。 「疲れているのに、そんな余裕はない」「出来が悪かったから思い出したくもない」と感じるお気持ちは、痛いほど理解できます。試験直後の解放感や、あるいは「もっと書けたはずだ」という悔しさから、一旦試験のことは忘れたいと思うのは当然のことです。 しかし、あえて厳しいことを申し上げます。その**「後でやろう」「今年はダメだったから来年頑張ろう」という思考こそが、合格の可能性を自ら手放してしまう最大の要因**なのです。
技術士試験は、筆記試験の合格発表後、口頭試験が待ち構えています。そして、口頭試験では、受験者本人が記述した筆記試験の答案内容について、試験官から直接質問されることがあります。
「そんなことは滅多にないだろう」と思われるかもしれません。確かに、全員が質問されるわけではありません。我々の経験則では、その確率はおよそ10人に1人程度です。しかし、問題は、その「1人」が誰になるのか、誰にも予測できないという点です。もし、あなたがその「1人」に当たってしまったら?
4ヶ月も前に書いた論文です。詳細な内容、特に細かな数値や論理の展開、どのような課題認識からその解決策を導き出したのかを、記憶だけを頼りに正確に、かつ淀みなく説明できるでしょうか。
試験官は、あなたの論文を手元に見て質問してきます。曖昧な返答や、論文の内容と矛盾した説明をしてしまえば、「この論文は本当に自身で深く考察して書いたものだろうか?」「技術士として不可欠な、自身の業務内容を的確に説明する能力に欠けるのではないか?」という致命的な疑念を抱かれかねません。
「ドキドキ緊張して口頭試験で失敗します」。まさに、この準備不足が、本来であれば不要な緊張を生み、あなたの実力発揮を妨げる最大の敵となるのです。
毎年、筆記試験の合格発表後に、こんなご相談が後を絶ちません。
「先生、合格していました!でも、再現解答を作っていなくて、論文に何を書いたかほとんど覚えていません。どうしたらいいでしょうか?」
このパターンに陥ってしまう方の多くは、試験直後に「手応えがなかったから、今年はもう諦めよう」と、ご自身で合否を判断してしまっています。しかし、技術士試験の採点基準は、我々が考えるよりもずっと多角的です。自分では不出来だと思っていても、合格ラインに達しているケースは決して珍しくありません。
勝手な自己評価で準備を怠り、合格という千載一遇のチャンスを目の前にして、慌てふためく。これほど勿体ないことはありません。合格発表までの期間は、決して「結果待ち」の期間ではないのです。合格していることを前提として、次のステージへの準備を進める期間なのです。この「発表後まで何もしない」という選択だけは、どうか、絶対に避けてください。
疲れた頭で論文を思い出す作業は、苦痛かもしれません。しかし、この苦労は、未来のあなたを助ける何よりもの投資となります。
再現解答があれば、試験官からのどんな角度の質問に対しても、自身の論文を軸とした一貫性のある回答が可能です。これは、あなたの論理的思考能力と誠実さを証明する上で絶大な効果を発揮します。
書き出した論文を改めて読み返すことで、「この部分はもう少し具体的に書けたな」「この課題設定は秀逸だった」など、自身の論文の強みと弱みを客観的に分析できます。弱点が見つかれば、口頭試験で補足説明をする準備ができますし、強みは自信を持ってアピールする材料になります。
人間の記憶は、驚くほど早く薄れていきます。特に、極度の緊張状態で書き上げた論文の内容は、日常業務に戻るとあっという間に詳細を忘れてしまいます。「鉄は熱いうちに打て」の言葉通り、試験の記憶が鮮明な「今」だからこそ、価値ある再現ができるのです。完璧な文章でなくて構いません。キーワード、骨子、箇条書きでも十分です。とにかく「書き出す」という行為そのものが重要なのです。
再現解答の作成が終われば、あなたは他の受験者よりも、精神的に大きなアドバンテージを得たことになります。その上で、口頭試験までの4ヶ月間を有意義に過ごしましょう。
なぜ技術士を目指したのか、その原点を思い出し、モチベーションを再燃させましょう。再現解答を基に、自身の業務経歴や専門知識との繋がりを整理し、口頭試験で何を語るべきか、具体的な学習計画を立ててください。本格的な準備は夏が終わる8月頃からで構いません。しかし、その土台となる再現解答だけは、今、この週末にでも完成させてください。
もちろん、休息は不可欠です。試験のプレッシャーから解放され、心身をリフレッシュさせる時間も大切にしてください。健康な心と体が、最高のパフォーマンスを生み出します。
同じ目標を持つ仲間と再現解答を見せ合ったり、情報交換をしたりすることは、非常に有効です。模擬面接などで専門家や先輩技術士から客観的なフィードバックをもらうことも、独りよがりな対策に陥るのを防ぎ、改善点を明確にしてくれます。
筆記試験という大きな壁を乗り越えた皆様の努力が、必ずや実を結ぶ日が来ます。その最後の瞬間まで、決して油断することなく、自分自身の可能性を信じ抜いてください。今、この瞬間の少しの頑張りが、4ヶ月後の口頭試験会場で、自信に満ち溢れたあなたの姿を創り出します。
疲労困憊の中、大変な作業であることは重々承知の上で、重ねてお願いいたします。
さあ、今すぐ、あなたの未来の合格を確実にするための「再現解答」作成に取り掛かってください。
![]() | 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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