国土交通省がカーボンニュートラル達成のために解決すべき課題として、主に以下の5点が挙げられると考えられます。これらは、提示された資料から読み取れる同省の取り組み方針や重点事項に基づいています。
元の資料は以下
1.革新的技術の開発・普及と社会実装の加速化、コスト低減の実現
運輸分野におけるゼロエミッションが課題。
持続可能な航空燃料(SAF)、次世代自動車の開発・実用化 、建設分野におけるCO2を排出しない建機(電動、水素、バイオ燃料等)の開発・普及 は、カーボンニュートラルの鍵となる。
しかし、これらの技術は開発途上であったり、実用化されてもコストが高い場合が多く、社会全体へ広く普及させるためには技術開発のさらなる加速と、量産化等によるコスト低減が不可欠である。
国土交通省の考え方: グリーンイノベーション基金等を活用し、産学官連携で技術研究開発を強力に推進する方針です 。
また、革新的建設機械の認定制度の創設や公共工事での率先導入、新材料の現場試行への支援などを通じて、初期需要の創出や普及を後押ししようとしています 。
2.サプライチェーン全体での排出削減が課題
建設業においては、現場での直接的な排出(Scope1,2)よりも、鉄鋼やセメントといった資材の製造・輸送などサプライチェーン上流での排出(Scope3)が大きな割合を占めている 。
サプライチェーン全体での取り組みなしには、建設分野の抜本的なCO2削減は困難である。
各事業者の意識改革と連携体制の構築、排出量の算定・管理手法の確立が求められる。
国土交通省の考え方: 建設現場の脱炭素化においては建設業としての取り組みと、サプライチェーン全体の取り組みの両方を推進する必要性を強調しています 。公共事業において省CO2に資する建設材料の活用推進体制を構築することや 、ライフサイクル全体を見据えたCO2削減効果の評価手法の導入を検討しています 。
3.再生可能エネルギーの最大限導入と既存インフラの有効活用
再生可能エネルギーの導入拡大が課題。
道路、河川、空港、港湾、ダム、下水道といった広大なインフラ空間や既存施設を最大限に活用して太陽光発電や水力発電等を導入する必要がある。施設の本来機能との両立、景観や環境への配慮、設置場所の確保、系統接続、コストなどの分析検討が必要である。
また、インフラ管理用設備自体のエネルギー自給自足化も求められる 。
国土交通省の考え方: インフラ空間を活用した太陽光発電等の導入を推進し、空港の再エネ拠点化 、ダムの運用改善等による水力エネルギーの創出促進 、下水道バイオマス活用の技術開発・導入支援 などに取り組んでいます。
インフラ管理用電気通信設備については、再生可能エネルギー活用や省エネ化により電力の自給自足化を目指す方針です 。
4.CO2排出・吸収量の算定・評価・認証システムの確立と「見える化」の推進
CO2排出量や吸収量を科学的根拠に基づき算定・評価することが課題。
取り組みの進捗を正確に把握し、効果的な対策を推進するためには信頼性の高いシステムが必要である。
特に、コンクリート構造物によるCO2吸収効果 やブルーカーボン生態系によるCO2吸収量 など、新たな吸収源の評価手法の確立は途上である。
また、建設段階や維持管理段階の工程・工種ごとのCO2排出量を「見える化」し、関係者間で共有することも必要となっている。
国土交通省の考え方: ブルーカーボン生態系によるCO2吸収量の算定手法を確立し、国のインベントリやNDCへの位置づけを目指すとしています 。
また、インフラのライフサイクル全体を通して省CO2に資する計画・設計手法の導入や、CO2削減に資する取り組みの削減効果を定量的に算出・評価可能にするための技術開発を推進する考えです 。
5.社会実装に向けた制度的支援、規制・基準整備と多様な主体との連携・合意形成
インセンティブ付与や規制緩和、新たな基準の整備といった制度的な後押しが課題である。
新しい技術や取り組みを社会に広く浸透させるためには、ZEH・ZEB基準の段階的引き上げや省エネ基準適合の全面義務化 、革新的建設機械や低炭素材料の公共工事での活用促進 などが挙げられる。
また、これらの施策を進める上では、産業界、地方自治体、国民など、多様なステークホルダーとの丁寧なコミュニケーションと合意形成が求められる。
国土交通省の考え方: 建築物省エネ法改正による省エネ基準適合の義務化や段階的基準引き上げを進めています 。
公共工事の入札契約時の総合評価や工事成績評定での加点により、事業者の取り組みを促進する方針です 。
また、SAF導入や鉄道の再エネ導入に関しては官民協議会を設置するなど、関係者との連携・協調を重視しています 。