■技術士試験対策における思考力の重要性
技術士試験に合格するためには、知識だけでなく「考える力」が求められます。特に、論文試験では、単なる暗記ではなく、問題の本質を捉え、論理的に整理し、的確に表現する能力が必要です。そのために重要なのが 「抽象化」と「具体化」の往復 です。
この思考プロセスを意識しながらトレーニングすることで、技術士試験で求められる論理的思考力と表現力を鍛えることができます。
■抽象化とは?
抽象化(Abstraction) とは、個別の事例や経験から共通点を見出し、一般化・概念化することです。技術士試験では、次のような場面で求められます。
問題文の要点を把握し、解答の方向性を決める
事例を一般的な技術的課題として整理する
専門技術を分かりやすく説明するために、シンプルなモデルに置き換える
例:抽象化の実践
事例(具体的な情報)
「ある工場で、設備の老朽化により故障頻度が増加し、生産性が低下している。」
抽象化(一般化・概念化)
「産業設備の維持管理において、老朽化に伴う機能低下とメンテナンス計画の最適化が課題となる。」
このように、個別の問題を抽象化すると、他の事例にも応用できる汎用的な問題設定になります。
■具体化とは?
具体化(Concretization) とは、抽象的な概念や一般論を、具体的な事例や数値、図表を用いて説明することです。技術士試験では、次のような場面で求められます。
抽象的な技術概念を、実際の事例を交えて説明する
解決策の実効性を示すために、具体的な数値や図解を用いる
説明が抽象的すぎるときに、具体的な例を加えてわかりやすくする
例:具体化の実践
抽象的な説明
「老朽化した設備のメンテナンス計画を適切に策定することが重要である。」
具体化した説明
「例えば、20年以上稼働しているボイラー設備では、過去5年間の故障頻度が年3回から年8回に増加している。このような場合、予防保全の観点から定期的な交換部品の更新やIoTを活用した状態監視システムの導入を検討すべきである。」
このように、数値や具体例を加えることで、論文の説得力が格段に向上します。
技術士試験に向けた「抽象化」と「具体化」のトレーニング方法
1. 新聞記事や技術レポートを使う
新聞記事や技術レポートを読み、その内容を 抽象化(要約) し、それを自分の専門分野に合わせて 具体化(応用) する練習をしましょう。
例:「インフラ老朽化が進む中で、橋梁の維持管理が課題」との記事を読んだら、
抽象化:「社会インフラの維持管理において、劣化診断技術の活用が求められる。」
具体化:「例えば、橋梁点検では、AI画像解析技術を活用してひび割れ検出を自動化し、従来の点検コストを20%削減する取り組みが進められている。」
2. 論文試験の過去問を使う
試験の過去問を使い、「問題文の要点を抽象化し、解答を具体的に記述する」練習を行うと良いでしょう。
例:「自然災害に備えた社会基盤の強靭化策を述べよ。」
抽象化:「気候変動に伴う災害リスクの増加に対応するため、インフラの耐久性向上と被害軽減対策が求められる。」
具体化:「例えば、耐震補強工事では、橋脚の鋼材補強や免震ゴムの導入により、震度6強の地震に対する耐久性を向上させることができる。」
3. 「なぜ?」と「例えば?」を繰り返す
日常的に考えるトレーニングとして、何かを説明するときに**「なぜ?」と「例えば?」**を繰り返し使う習慣をつけましょう。
「なぜ?」→ 抽象化
「例えば?」→ 具体化
例:
なぜ、メンテナンスが重要なのか? → 「設備の寿命を延ばし、コスト削減と安全性向上を図るため。」(抽象化)
例えば、どのようなメンテナンス方法があるか? → 「振動解析を活用した異常検知や、IoTセンサーによる予兆保全。」(具体化)
4. まとめ:抽象化と具体化を行き来することが思考力を鍛える
技術士試験では、問題の本質を捉え、論理的に説明する能力が求められます。そのためには、
抽象化 で本質を見抜き、整理する
具体化 でわかりやすく説明し、説得力を高める
これらを繰り返すことで、思考を深める
この「抽象化と具体化の往復」を意識して日々トレーニングすることで、試験に求められる論理的思考力と記述力が向上します。