技術士に求められるコンピテンシーも改訂になります

2024/12/12

技術士に求められるコンピテンシーも改訂になります

2023年は倫理綱領が改定になりました。
加えて、技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)も改訂になりましたが、新コンピテンシーが試験に適用されるのは、令和8年からです。
つまり、令和7年の試験には関係ありません。
とは言え、どのように変わるのか? これは理解しておいた方が良いと思います。

  • 専門的学識
  • 問題解決
  • マネジメント
  • 評価
  • コミュニケーション
  • リーダーシップ
  • 技術者倫理
  • 継続研鑽

コンピテンシーは上記の8項目です。

このうち、

専門的学識
マネジメント
評価
リーダーシップ

の4項目は変更がありません。
なので、変更のある4項目にフォーカスして変更点を確認します。
太字+アンダーラインの部分が変更によって加えられた部分です。


「問題解決」変更前

  • 業務遂行上直面する複合的な問題に対して,これらの内容を明確にし,調査し,これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
  • 複合的な問題に関して,相反する要求事項(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等),それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮したうえで,複数の選択肢を提起し,これらを踏まえた解決策を合理的に提案し,又は改善すること。

「問題解決」変更後

  • 業務遂行上直面する複合的な問題に対して,これらの内容を明確にし,必要に応じてデータ・情報技術を活用して定義し,調査し,これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
  • 複合的な問題に関して,多角的な視点を考慮し,ステークホルダーの意見を取り入れながら,相反する要求事項(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等),それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で,複数の選択肢を提起し,これらを踏まえた解決策を合理的に提案し,又は改善すること。

「コミュニケーション」変更前
    • 業務履行上,口頭や文書等の方法を通じて,雇用者,上司や同僚,クライアントやユーザー等多様な関係者との間で,明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
    • 海外における業務に携わる際は,一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え,現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること

    変更後

    • 業務履行上,情報技術を活用し,口頭や文書等の方法を通じて,雇用者,上司や同僚,クライアントやユーザー等多様な関係者との間で,明確かつ包摂的な意思疎通を図り,協働すること。
    • 海外における業務に携わる際は,一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え,現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。

    註:包摂的(ほうせつてき)とは、あるものを包み込んで取り込み、多様な人々を社会に受け入れることを意味します。

    具体的には、次のような意味があります。

    • 異なる意見や立場、文化や価値観などを受け入れ、調和を図る
    • 個々のニーズや背景を重視し、特定のグループや状況に焦点を当てて対応する
    • 社会のあらゆるメンバーが参加できるように設計される

    「包摂的社会」とは、すべての人々を排除せず、包摂し、ともに生きることができる社会を目指す考え方です。 「包摂」の反対語は「社会的排除」です。


    「技術者倫理」変更前

    • 業務遂行にあたり,公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮したうえで,社会,文化及び環境に対する影響を予見し,地球環境の保全等,次世代にわたる社会の持続性の確保に努め,技術士としての使命,社会的地位及び職責を自覚し,倫理的に行動すること。
    • 業務履行上,関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
    • 業務履行上行う決定に際して,自らの業務及び責任の範囲を明確にし,これらの責任を負うこと。

    「技術者倫理」変更後

    • 業務遂行にあたり,公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮した上で,社会,経済及び環境に対する影響を予見し,地球環境の保全等,次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成を目指し,技術士としての使命,社会的地位及び職責を自覚し,倫理的に行動すること。
    • 業務履行上,関係法令等の制度が求めている事項を遵守し,文化的価値を尊重すること。
    • 業務履行上行う決定に際して,自らの業務及び責任の範囲を明確にし,これらの責任を負うこと。

    「継続研鑽」変更前

    業務履行上必要な知見を深め,技術を修得し資質向上を図るように,十分な継続研さん(CPD)を行うこと。

    「継続研鑽」変更後

    CPD活動を行い,コンピテンシーを維持・向上させ,新しい技術とともに絶えず変化し続ける仕事の性質に適応する能力を高めること。

    大きく変わったのは、継続研鑽とコミュニケーションだけですが、次回は内容を解説します。




    No Image 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール

    1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。

    次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。

    匠習作技術士事務所代表技術士
    プロフェッショナルエンジニア養成コンサルタント、医療機器業界転進コンサルタント、医工コーディネーター日本技術士会会員・日本機械学会会員・失敗学会会員、人工知能学会会員、日本医工ものづくりコモンズ会員、日本シャーロックホームズクラブ会員、放送大学大学院在学中

    『講師匠習作の技術士応援ブログ』は、スタディング受講者様へお送りしたメールマガジンの内容をウェブ用に一部抜粋・編集して掲載しております。


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