【技術士二次試験】令和5年の総監筆記問題のSWOT分析とは

2024/06/06

令和5年の総監筆記問題のSWOT分析とは

今回は総監の問題についてご説明します。
令和5年の筆記試験では、SWOT分析が出題されました。
SWOT分析は、4.0情報管理の最初、4.1の「情報分析と情報活用」の中にあります。
キーワード集にありますから、出題されても全く不思議はないのです。
バリューチェーン分析や3C分析もあります。
気になる方は、2024年キーワード解説集を確認して下さい。130ページ~140ページあたりです。

ただし、2年連続でSWOT分析が出題されることはあり得ません。
総監受講の皆さんは、やたらと令和5年の問題を解答して来ますが、あまり気にしない方が良いと思います。昨年問題文を見て驚いた方が多かったようですから、今でもそのショックが残っているのかも知れません。

SWOT分析は、ビジネス用語界の横綱です。「スウォットぶんせき」と読みます。
基本的なビジネス書には必ず登場します。
経営分野に分析ツールはいろいろありますが、これは最も初歩的であり、明快で非常に分かりやすいツールです。自社は、どの事業領域なら勝てるか、他社との違いをどこで出すか、どの方向に経営資源を集中すべきか、を考えるときに前提として不可欠の手法です。
でも、このツール自体は,F常にスマートにできていますが、実際にこれを使って分析を試みると、非常に難しいのです。

SWOT分析はビジネス戦略の策定において広く利用されるツールで、「強み(Strengths)」、「弱み(Weaknesses)」、「機会(Opportunities)」、「脅威(Threats)」の4つの要素からなるフレームワークです。以下に、お示しの文章の中で指摘されている問題点について、それぞれの内容を詳細に解説し、それに対する対応策を提案します。
以下、SWOT分析の問題点(課題ではなく問題点です)を3つ紹介します。


1つ目は、普通に分析すると「弱み」と「脅威」ばかりになってしまうということ。


問題点と対応策

分析における「弱み」と「脅威」の偏重
問題: 経済状況が悪化していると、企業は自社の弱点や外部の脅威を過剰に認識する傾向にあります。これにより、分析が消極的な視点で偏り、戦略の策定が困難になることがあります。
対応策: 分析を行う際は、弱点と脅威だけでなく、「強み」や「機会」にも等しく焦点を当てることが重要です。例えば、他社と比較して優位に立てるポイントや、市場の変化がもたらす潜在的なチャンスを積極的に探ることが求められます。


内部の弱点の明確化
問題: 自社の内部で「独自の技術がない」「新商品の開発力がない」などの弱点がある場合、それをただリストアップするだけでは前向きな戦略を立てることが難しいです。
対応策: 内部の弱点を具体的に洗い出した後、それを改善するための戦略を立案します。例えば、技術開発への投資増加、パートナーシップの形成、スキルアップを目的とした研修の実施などが考えられます。


外部環境の逆境
問題: 「長期継続的な値下げ圧力」「需要の減少」など、外部環境の逆境が企業の成長を阻害している場合があります。
対応策: 外部の脅威に対処するために、市場の新しいセグメントを開拓する、異業種との連携を模索する、製品やサービスの差別化を図るなどのアプローチが有効です。


結論
SWOT分析は、そのシンプルな構造にも関わらず、組織の現状を包括的に理解し、将来の戦略を立案するための非常に有効なツールです。ただし、その効果を最大限に発揮するためには、分析を均等に行い、各要素から得られる洞察に基づいて具体的な行動計画を策定することが不可欠です。


2つ目は、「強み」になるか「弱み」になるか、「機会」になるか「脅威」となるか、に明確な基準がないということ。つまり、同じ要素を取り上げても、評価者によって分類が違ってしまうということです。
未開部族の村に派遣された2人の靴のセールスマンの寓話は、よく知られていますね。

問題点

主観性と一貫性の欠如説明: SWOT分析は、評価者の主観や見解によって結果が大きく異なることがあります。例えば、ある人が見たときには「強み」に見える要素が、別の人には「弱み」と映るかもしれません。これは特に、個人の経験や価値観が分析に影響を与える場合に顕著です。このように、同じ情報から異なる解釈が生じることで、SWOT分析の客観性が損なわれ、戦略立案において一貫性のある方向性を見失うことがあります。

対応策

明確な基準の設定
分析を行う前に、何を「強み」、「弱み」、「機会」、「脅威」と見なすかについて、具体的で明確なガイドラインを設定します。これには、業界の基準、市場の要求、競争状況などを考慮に入れることが含まれます。


多角的な視点の導入
分析を行うチームに異なる背景を持つメンバーを含めることで、多様な視点からの意見を取り入れます。これにより、一方的な見解に基づくバイアスを減少させ、よりバランスの取れた評価が可能になります。


データと事実に基づく分析
客観的なデータや市場調査の結果を基に分析を行うことで、主観的な意見に頼ることなく、より信頼性の高いSWOT分析を実施することができます。


結論
SWOT分析は非常に有力な戦略ツールですが、その効果を最大限に発揮するためには、分析の主観性を管理し、客観的なデータに基づいた一貫した基準で評価を行うことが必要です。これにより、戦略立案においてより効果的で実行可能な計画を作成することが可能となります。


3つ目は、当たり前のSWO丁分析からは、当たり前の経営戦略しか出ないということ。
普通、「機会」を活かして「強み」を発揮できる分野に集中する、というのが戦略構築の定石とされます。でも、これでは当たり前の戦略しか導き出せません。同業他社だつて、同じような経営環境に置かれているのですから、同じ分析をしたら、同じ戦略しか出てこないんです。

問題点

革新性の欠如
説明: 伝統的なSWOT分析は、しばしば業界の標準的な戦略に基づいて行われ、これにより企業間での差別化が困難になります。多くの企業が「機会」を活かして「強み」を発揮する分野に集中するため、結果的に業界全体が似通った戦略を採用し、真の競争優位を築くことができなくなる可能性があります。

対応策

非伝統的な視点の採用
「弱み」や「脅威」に着目することで、他社が見落としがちな市場ニッチや革新的なアプローチを模索します。例えば、自社の弱みが競争相手にとっても共通の弱みである場合、その分野での独自の解決策を開発することが市場での独占を達成する鍵になるかもしれません。


深層分析の実施
表面的なSWOT分析に留まらず、より深いレベルで内外環境を分析することが重要です。これには、業界の深い洞察、顧客行動の詳細な分析、技術的進歩の予測などが含まれます。


異業種との連携
異業種との連携を通じて、新たな視点や技術を取り入れ、競争が少ない新市場を開拓します。これにより、独自の価値提案を創出し、業界内での差別化を図ることが可能になります。


結論
SWOT分析は非常に強力な戦略ツールであるものの、それをどう活用するかは経営者の創造力と戦略的洞察に依存します。真の差別化と持続的な競争優位を目指すためには、伝統的な枠組みを超えた思考が求められるのです。このプロセスは、単に現状を分析するだけでなく、未来を形作るための基盤として機能します。したがって、SWOT分析をただのツールとしてではなく、戦略的な思考を刺激するための起点として利用することが重要です。


このあたりしっかり理解すれば、令和5年の筆記問題に対し、独創的な解答が書けると思います。


No Image 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール

1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。

次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。

匠習作技術士事務所代表技術士
プロフェッショナルエンジニア養成コンサルタント、医療機器業界転進コンサルタント、医工コーディネーター日本技術士会会員・日本機械学会会員・失敗学会会員、人工知能学会会員、日本医工ものづくりコモンズ会員、日本シャーロックホームズクラブ会員、放送大学大学院在学中

『講師匠習作の技術士応援ブログ』は、スタディング受講者様へお送りしたメールマガジンの内容をウェブ用に一部抜粋・編集して掲載しております。


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