2023/05/18
課題と観点の関係で質問がときどきあります。
例えば以下の観点と課題は正しいでしょうか?
電力使用量低減化の観点から、「省電力化の対応」が課題
二酸化炭素排出量削減の観点から、「電気自動車の普及」が課題
上は厳密にいうと、2つとも観点が間違っています。
観点は抽象的で、解決できないことを書きます。
課題は逆に、具体的で解決できることを書きます。
上の2つは、具体的とまでは言えないですが、解決はできることです。
私流に正しく書けば、
電力使用量の観点から、「省電力化の対応」が課題
二酸化炭素排出の観点から、「電気自動車の普及」が課題
となります。
ところで、電気電子部門以外の方で、令和4年の電気電子部門必須Ⅰ-1の問題はご存知でしょうか?
以下のような問題です。(読みにくいので、私が(匠が)改行を入れてます。)
I-1
理工系分野の技術者不足は, 多方面で広く報告されている。 電気電子分野においては, 求められる技術者が専門ごとに異なり, 課題も変化し多様化している。 このため電気電子すべての専門分野で技術者不足が懸念されており、 今後の継続的発展のためには技術者を確保していくことが不可欠である。これらを踏まえ,以下の設問に技術面で解答せよ。(人事、政策などは含まない。)
(1) 電気電子分野の技術者としての立場で,
① 実務で求められるスキルと現状との不一致
②実務の生産性 (省力化など),
③専門分野の魅力や発展性, の3つの観点から課題を1つずつ抽出し, それぞれの課題の内容を示せ。 (*)
(*) 解答の際には必ず観点番号を述べてから課題を示せ。
(2)前問 (1) で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ, これを最も重要とした理由を述べよ。 その課題に対する解決策を3つ, ハードウェア技術とソフトウェア技術の区別を明記し, 専門技術用語を交えて示せ。
上記のように、観点を問題文が指定しています。
これは、面食らった受験者さんが多かったようです。
ロックオン講座の電気電子部門受講者さんは、皆さんⅠ-1を避けています。
電気電子部門の作問者が考えた観点は
① 実務で求められるスキルと現状との不一致
②実務の生産性 (省力化など),
③専門分野の魅力や発展性
上記の通りです。
抽象的で解決策に結びつかないです。
だから、観点なのです。
これが、例えば
「実務の生産性向上」と書いたら課題になりますよね?
観点は解決策に繋がらない書き方で良いのです。
逆に、課題は観点に繋げて下さい。
もう一つ、解決策というのは、具体的な行動です。
つまり、具体的な行動に繋げるには、課題が具体的でないと繋がりません。
ところで、「実用日本語表現辞典」という辞典があります。
この中に課題と問題の定義があって、興味深いので載せます。
課題とは
課題とは、解決するべき問題のこと。対処が必要な事柄であり、それへの対処を任務として負わされているような問題のこと。
つまり、いわゆる「問題」のうち「対処する」「解決する」といった行動に重点が置かれている問題を指し示す表現。
課題と問題の違い
いわゆる「問題」は、「対応や解決を迫られている事柄」などを意味する言葉である。
ただし「問題」の語そのものには、必ずしも「解決が必要不可欠」「解決するよう義務づけられている」といったニュアンスが含まれるとは限らない。(そうした義務のニュアンスを含めて用いられる場合は多々ある。)
つまり、「問題」は、対応や解決が必要な困難であり障壁ではあるが、
その中にはあえて対応せず無視・回避してよい事柄である場合がある。
これに対して、「課題」は、対応や解決が必要な困難であり障壁であり、
しかも無視したり回避したりする余地のない事柄(なんとかしないといけない事柄)というニュアンスを含む。
「問題」の考え方は技術士会の考えと少し違いますね。
技術士会の場合、問題は最終ゴールです。
ゴールにいくために、解決すべきことが「課題」です。
いかがでしょうか?
理解できましたか?
観点と課題の書き方が分からないとおっしゃる方が多いので、説明してみました。
匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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