【技術士二次試験】令和3年度の試験問題を考える

2021/07/29

令和3年度の試験問題を考える

令和3年度の問題が公開されました。
例えば、建設部門の必須問題ですが、設問だけ見てみましょう。

Ⅰ-1
(1)建設分野において廃棄物に関する問題に対して循環型社会の構築を実現するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を 1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。
(4)前問(1) ~(3)の業務遂行に当たり 技術者としての倫理社会の持続可能性の観点から必要となる要件、留意点を述べよ。

Ⅰ-2
(1)災害が激甚化・頻発化する中で、風水害による被害を、新たな取組を加えた幅広い対策により防止又は軽減するために技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問( 1) で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を 1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問( 2)で示したすべての解決策を実行しでも新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1) ~(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

次は化学部門です。

Ⅰ-1
(1)デジタル化によって化学産業の変革を推進するに当たり、①~③に関する現状と課題について述べよ。
(2)抽出した課題に関して、最も重要と考える課題を1つ挙げて、その課題に対する解決策を3つ示せ。
(3)解決策に関連して新たに生じうるリスクとその対策について述べよ。
(4)前問(1) ~(3)の業務遂行において必要な要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

Ⅰ-2
(1)化学技術者の視点から、「脱炭素社会化Jを推進するに当たり「エネルギー源の安定的確保」と「脱炭素社会化に伴うシーズ・ニーズの変化」などを多角的に分析して、 3つの課題を抽出し各々の課題を説明せよ。
(2)抽出した課題に関して要求事項と影響の重要度を考慮した上で課題を 1つ挙げ、選んだ理由とその課題に対する解決策を3つ示せ。
(3)解決策を実行した際に新たに生じうるリスクを示し、それへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1) ~(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から留意点を述べよ。

一目で分かると思いますが、建設部門は設問1で、「観点を示せ」とあります。しかし、化学部門ではⅠ-1、Ⅰ―2どちらにもそれがありません。
また、設問3を見て下さい。
建設部門は、Ⅰ-1で「解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策を示せ。」
Ⅰ-2では「新たに生じうるリスクとそれへの対応策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。」

と2種類になっています。
しかし、化学部門では、どちらにも「観点」を求める記述はありません。また、設問3では「新たに生じうるリスクとその対策について述べよ。」です。
「専門技術云々」は、それほど気にしなくても良いと思います。そもそも、専門技術を抜きにして、リスクも対策も答えられないはずです。
まだ、全ての部門の問題は確認していませんが、10部門くらいを見た感じでは、どの部門も設問形式に変りはありません。
実は、令和3年の問題では少し変化があるかもしれないと思っていたのですが、変化と言えるほどの違いはありませんでした。おそらく、来年も同じような設問になるでしょう。

No Image 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール

1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。

次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。

匠習作技術士事務所代表技術士
プロフェッショナルエンジニア養成コンサルタント、医療機器業界転進コンサルタント、医工コーディネーター日本技術士会会員・日本機械学会会員・失敗学会会員、人工知能学会会員、日本医工ものづくりコモンズ会員、日本シャーロックホームズクラブ会員、放送大学大学院在学中

『講師匠習作の技術士応援ブログ』は、スタディング受講者様へお送りしたメールマガジンの内容をウェブ用に一部抜粋・編集して掲載しております。