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刑法11 抽象的事実の錯誤の問題1の解説について、ご質問させ…

スタディング受講者
質問日:2023年9月20日
刑法11 抽象的事実の錯誤の問題1の解説について、ご質問させていただきます。 
「Xは、知人Vを殺害しようとして、そこにいるのがVだと思い込んで猟銃で狙撃し、命中した。しかしXがVだと思っていたのは実際にはVが飼っていた大型犬であり、その犬は死亡した。このとき、Xには器物損壊罪は成立しない。」

正解 ○
「行為者が意図した内容と、発生した事実とが食い違い、それらが異なる構成要件に属する場合を、抽象的事実の錯誤といいます。

設問において、XはVを殺害しようとして猟銃で狙撃しているため、殺人罪の認識があるといえます。しかし発生した結果は器物損壊です。このような場合のXに、器物損壊罪の故意が認められるかが問題となります。

(なお、Xが意図した殺人罪については、本設問ではそもそもそのような危険が発生していないため、殺人未遂罪も成立の余地はありません。)
故意責任の本質が規範に直面しつつあえて行為を行うという反規範的人格態度に対する道義的非難であり、規範が構成要件によって与えられることからすると、行為者の認識した構成要件と、発生した構成要件的結果が保護法益や行為態様の点で両者が社会通念上重なり合っているときは、重なり合いの限度で故意が認められると解されます。
Xにはあくまでも殺人罪の認識しかなく、殺人罪と器物損壊罪では社会通念上重なり合っているとはいえないため、器物損壊罪の故意は認められません。
なお、器物損壊については過失があるといえますが、過失器物損壊罪は規定されていないことから、Xは不可罰となります。したがって、設問は正しいといえます。」

 本件は、人を射殺しようとして猟銃で撃った(殺人の実行行為をした)ところ、たまたま錯誤して犬を射殺してしまったという事案です。
 しかし、この事案が不可罰となると、刑法の目的である犯罪行為の一般予防も犯罪行為の実行行為者に対する特別予防も果たせなくなってしまう。次回に、ⅩはⅤを猟銃で狙撃して本当に殺してしまう危険がある。
 解説には、(なお、Xが意図した殺人罪については、本設問ではそもそもそのような危険が発生していないため、殺人未遂罪も成立の余地はありません。)としていますが、殺人未遂罪を問うことができない理由をご教示いただければ幸いです。
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回答

漆原 講師
公式
回答日:2023年9月20日
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