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スマート問題集-刑法64 背任罪(その1)の問題2に関連して…

スタディング受講者
質問日:2023年7月16日
スマート問題集-刑法64 背任罪(その1)の問題2に関連して質問です(問題文は下段に掲載)。
本問いでは、「融資の最終決定権限を有していた甲」が、「A社社長個人に融資する形で貸し付けた(なお、個人に融資するのはV銀行の規定上、禁止されていた)。」とのことですが、解説において「設問の場合は背任罪が成立する可能性が高いため、設問は誤っています。」の理屈がわかりません。この条件では、背任罪ではなく横領罪が成立し、背任罪は成立しないと思うのですがいかがでしょうか。以下の点で疑問があります。
・同様の過去の質問https://member.studying.jp/ask/index/detail/id/1658/を拝見するに、
「横領罪と背任罪については、
①名義又は計算が本人か自己かによって判断するもの
②権限逸脱行為は横領、権限濫用行為は背任とするもの
③不法領得の意思があるか否かによって判断するもの
④第三者の利益を図る目的があるか否かによって判断するもの
といくつかの考え方があります。
解説にもあるとおり、裁判例においては①で判断している傾向が多いです。
しかし、①だけでは完全に判断できない場合もあります。
そこで、原則としては①基準で判断し、②基準を補完的に使って判断すると良いと思います。」
に照らし合わせると、当該貸し付けの行為は、規定違反をしており、当該者で規約を勝手に変えられない、という前提に基づくと「本人(銀行)の委託の趣旨に反し絶対に許されない行為であり」横領罪が成立し、背任罪は不成立になるものではないかと思料しますがいかがでしょうか。当該行為がなぜ「権限逸脱行為」ではなく、「権限濫用行為」にあたるのでしょうか。
・「甲にはV銀行の利益を図る目的がある以上、背任罪が成立する余地はない。」という問いに対して、×ということは、後段の「背任罪が成立する余地はない」という部分ではなく、「甲にはV銀行の利益を図る目的がある以上」というその条件に対して適切ではないので×という理解をしました。ただし、解説の「設問の場合は背任罪が成立する可能性が高いため、」を読み取ることが困難でした。

以上、背任罪が成立する可能性が高い理由を具体的かつ網羅的にお答えいただければ幸いです。

以下本問
ーーーーーーーー
V銀行に勤務し、融資の最終決定権限を有していた甲は、V銀行とも従来から取引があったA社の社長が、V銀行の役員と懇意であって人事にも影響を及ぼすことができる人物であったことから、A社に融資を行いたいと考えた。しかし、A社はこれまでの融資の返済が滞っており、V銀行の規定に照らすと、A社に対して更に融資を行うことはできなかった。

そこで甲は、更なる融資を実行することによってA社の事業を建て直し、滞っていた貸付金をも回収するため、A社社長個人に融資する形で貸し付けた(なお、個人に融資するのはV銀行の規定上、禁止されていた)。

甲にはV銀行の利益を図る目的がある以上、背任罪が成立する余地はない。

解説
背任罪が成立するためには自己若しくは第三者の利益を図る目的が必要です。設問の甲には、更なる融資によって滞っていた返済を促す目的があるため、本人(V銀行)の利益を図る目的もあるといえます。このような場合に、第三者図利目的が認められるかが問題となります。

判例は、本人図利目的と第三者図利目的とが併存するような場合は、どちらが主目的であったかで決するとしています(最判S35.8.12など)。

下記東京高裁は、設問類似の事案において、銀行の利益を図る目的は全く従たる目的に過ぎないとして第三者図利目的を認めています。また、設問においては、既に追加融資を受けられない状態のA社に融資する目的であること、規約に反して社長個人に融資する形式をとっていることなどからすると、第三者図利目的が主であるといえるとともに、V銀行に財産上の損害を加えたものと評価しえます。

したがって、設問の場合は背任罪が成立する可能性が高いため、設問は誤っています。
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回答

漆原 講師
公式
回答日:2023年7月17日
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