司法試験・予備試験のQ&A
1. 質問対象 刑法60 電子計算機使用詐欺、準詐欺罪、…
1. 質問対象
刑法60 電子計算機使用詐欺、準詐欺罪、恐喝罪
スマ問 問題2
2.質問
下記は、「東京地判 H7.2.13」のスマ問の解説について、一部短く書いた概要です
(概要は変わらない様に短くしたつもりです)。
法務局へハッキングして、不動産登記データを書き換えたことは、
「不正な指令」(246条の2)に該当するが、
不動産登記のデータは、実際の財産権の得喪・変更を公証するに過ぎないもので
あって、それ自体が財産権の得喪若しくは変更に係る記録には当たらない。
ということですので、解説の通り、
電子計算機使用詐欺罪が成立しない、のは、「それ自体が財産権の得喪若しくは
変更に係る記録には当たらない」、からということなのだと認識しておりますが、
何故、「それ自体が財産権の得喪若しくは変更に係る記録には当たらない」ので
しょうか。
一般的に、登記が大切、と思うのは、所有権(登記の中で一番大きな権利と思って
おります)が公に認められるから、道義的非難に当たる行為をやってくる人達がいて
も、登記をしておくことで、道義的非難に当たる行為をやってくる人達への盾や堤防
となってくれるからだと思いますし、普通の多くの人が、個人財産を守ってくれる
素晴らしい制度だと思っていると思います。
講義の中で先生のお話にもありましたように、実際の裁判でも、二重譲渡の場合等
(講義で沢山出てきましたので例として挙げました)、登記している方が勝ち(民法
177条)、大きな力が働いてくれる結果となるかと思います。
そういったことを前提に考えますと、
「不動産登記のデータは、実際の財産権の得喪・変更を公証する」ものであり、
「それ自体が財産権の得喪若しくは変更に係る記録には当たる」となりそうで、
電子計算機使用詐欺罪が成立しそう、と思ってしまうのですが、
何故、大きな力が働いてくれるにも関わらず、それ自体が財産権の得喪
若しくは変更に係る記録には当たらない。」のでしょうか。
「実際の財産権の得喪・変更を公証する」ものと「財産権の得喪若しくは変更に係る記録」とは、何が違うのでしょうか。
例えば、「財産権の得喪若しくは変更に係る記録」とは、何がそれに当たるあるのでしょうか。
3.問題文と解説文(全文)
問題2
甲は、仲間とともに作成したコンピュータソフトを用いて法務局のシステムに不正信号を送信し、乙が所有する不動産の所有権が、売買によって甲へと移転されたように不動産登記のデータを書き換えた。甲には電子計算機使用詐欺罪が成立する。
解説
電子計算機使用詐欺(246条の2)において、コンピュータソフトを用いることが「不正な指令」に該当するか、また、不動産登記のデータが「財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録」に該当するかが問題となります。
「不正な指令」とは、当該システムにおいて、本来与えられるべきでない指令のことをいうため、コンピュータソフトを用いて不正信号を送信した場合は「不正な指令」に該当します(東京地判H7.2.13)。
他方で、不動産登記のデータは、実際の財産権の得喪・変更を公証するに過ぎないものであって、それ自体が財産権の得喪若しくは変更に係る記録には当たりません。そのため、電子計算機使用詐欺罪にいう不実の電磁的記録には該当しません。
したがって、甲には電子計算機使用詐欺罪は成立しないため、設問は誤っています。
非常に、初歩的な質問で申し訳ございませんが、
ご教示賜りたく、どうぞよろしくお願いいたします。
回答
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