2026/05/28
技術士第二次試験の必須科目Ⅰに挑む皆さま、学習の進捗はいかがでしょうか。
最新の白書を読み込み、キーワード学習を重ねるほど、「あれも書きたい、これも重要だ」と、解答用紙から溢れんばかりの知識が頭に詰まっている時期かもしれません。しかし、ここに合格を阻む「知識の罠」が潜んでいます。
今回は、必須科目Ⅰで多くの受験生が陥る「論文の発散」を回避し、採点者に刺さる一貫した論理を構築するための「引き算の論理」について解説します。
必須科目Ⅰの設問(1)では、技術部門全般にわたる複合的な課題に対し、多面的な観点から分析することが求められます。ここで真面目な受験生ほど、白書にあるような「人口減少」「老朽化」「DX」「カーボンニュートラル」といった要素をすべて均等に盛り込もうとします。
しかし、解答用紙には3枚という厳格な制約があります。すべての観点を等しく論じようとすれば、一つひとつの課題に対する分析や要因の掘り下げが浅くなり、結果として「専門的学識」や「問題解決能力」の不足と判定されてしまうのです。
「多面的な観点」とは、単に数をたくさん挙げることではなく、物事を俯瞰して異なる切り口から捉える能力を指します。
例えば、私の指導方針である「専門的学識、問題解決、評価、技術者倫理、コミュニケーション」の観点に沿って考えると、以下のような切り口が考えられます。
課題を抽出した後の設問(2)「解決策」では、すべての課題に1対1で対応させる必要はありません。むしろ、抽出した課題の中から「今、最も解決すべき本質的な課題」を一つ選び抜き、そこを「論理の主軸」に据えるべきです。
ここで「引き算」が必要になります。
自分の専門性を活かせるか: あなたのこれまでの実務経験や強みが最も発揮できる課題はどれか。
論理が展開しやすいか: その課題を選んだ理由(選定理由)に、社会的背景や客観的データに基づいた説得力を持たせられるか。
もしDXを主軸にするなら、他の課題(例えば老朽化対策)は「DXによって効率化される対象」として位置づけるなど、論文全体のストーリーを一つの方向に収束させてください。
前半の課題抽出や解決策で情報を詰め込みすぎると、設問(3)の「副作用や新たなリスク(評価)」や設問(4)の「技術者倫理」を書くスペースがなくなります。
コンピテンシー「評価」を示すためには、解決策を講じた後に起こりうる副作用を論理的に予見し、対策を述べる「深さ」が必要です。情報をあえて削り、この重要な加点ポイントに文字数を割くことこそが、合格論文の「段取り」です。
「何でも書ける」論文は、採点者から見れば「何を主張したいのかわからない」論文です。
今日からの過去問演習では、以下の手順を繰り返してください。
観点をMECEに3つ出す。
そのうち、自分の専門知見が最も乗る1つを「主軸」に決める。
残りの情報は、主軸を補強するための脇役として「引き算」で記述する。
この「絞り込む勇気」こそが、情報を知識へと変え、あなたを合格へと導く技術士としての資質です。
筆記試験当日、研ぎ澄まされた一本の論理の軸を持って挑めるよう、今から「捨てる勇気」を磨いていきましょう。
| 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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