2026/05/14
後編でまず押さえたいのは、重点目標Ⅲ「インフラ分野が先導するグリーン社会の実現」です。
ここで重要なのは、インフラが環境負荷の原因として扱われているだけでなく、脱炭素や自然共生を実現する主体として位置付けられていることです。資料では、2050年カーボンニュートラルの実現、自然共生社会の実現、資源循環型の経済社会システムの構築という3つの方向が示されています。つまり、今後の試験では「環境に配慮したインフラ整備」という従来型の設問よりも、「インフラ分野がどうグリーン社会を牽引するか」という一段深い問い方がされてもおかしくありません。
資料では、道路照明のLED化、都市緑化による温室効果ガス吸収、道路空間における太陽光発電設備の導入促進、EV充電施設の設置促進などが示されています。つまり、脱炭素はエネルギー分野だけの話ではなく、道路、都市、港湾、下水道など幅広い社会資本に及んでいます。
試験で書くときも、単に「省エネを進める」と書くのでは弱いです。社会資本の整備・維持管理・運用の各段階で、どのように脱炭素化を進めるかまで書けるほうが強いです。
重点目標Ⅲの中で、上下水道分野の受験者にとって特に注目すべきなのが、下水汚泥の肥料利用推進です。
資料では、下水汚泥肥料利用率をR5年度15%からR12年度30%へ引き上げるKPIが示されています。これは、下水道を単なる処理施設として見るのではなく、資源循環型社会を支えるインフラとして捉える発想です。
したがって、今後の試験では、下水道を論じる際に、老朽化対策や耐震化だけでなく、エネルギー回収や肥料利用などの資源循環の視点を入れられるかが差になるでしょう。
資料では、流域治水におけるグリーンインフラの活用推進や、河川空間等におけるグリーンインフラの形成推進、ネイチャーポジティブの実現が示されています。
ここで重要なのは、グリーンインフラが単なる景観向上ではなく、防災、生態系保全、地域の魅力向上など多面的な効果を持つと位置付けられていることです。試験では、複数の課題を一つの施策でどう解くかが評価されやすいので、グリーンインフラは非常に出題しやすいテーマです。「自然の機能を活かして防災機能を高める」「環境価値と地域価値を同時に高める」といった表現ができると強いです。
重点目標Ⅳ「戦略的・計画的な社会資本整備を支える基盤の強化」は、受験者が意外と軽視しがちです。
しかし、ここはかなり重要です。
資料では、地域のインフラを支える地方公共団体の管理機能の維持、建設業等の担い手の確保・育成、生産性向上、新技術・DXによるインフラの価値向上が示されています。つまり、どれだけ立派な計画を書いても、それを実行する人材、組織、データ基盤がなければ意味がありません。今後の試験では、「何をやるか」だけでなく、「誰が支えるのか」「どう持続させるのか」まで問われる可能性が高いです。
資料では、第三次・担い手3法を踏まえた処遇改善や働き方改革、i-Construction2.0等を通じた現場の生産性向上が示されています。これは建設業界の担い手不足が、もはや業界内部の課題ではなく、社会資本整備そのものの持続可能性を左右する国の課題になっていることを意味します。
したがって、今後の試験で担い手確保や生産性向上はかなり出しやすいです。しかも、単に「人を増やす」ではなく、処遇改善、働き方改革、デジタル活用、施工の高度化まで含めて論じる必要があります。
重点目標Ⅳの中で特に重要なのが、広域・複数・多分野のインフラ管理、すなわち地域インフラ群再生戦略マネジメントと、DXの推進です。
資料では、複数自治体、複数分野のインフラを「群」として捉えて管理を進める考え方や、データ連携やAIを活用したインフラDX、オープンデータによる建築・都市のDXが示されています。これは、人口減少と技術職員不足が進む中で、従来の自治体単独・施設単独の管理では限界があるという認識に立つものです。DXについても、単なるシステム導入ではなく、広域化、維持管理高度化、生産性向上と結び付けて書くことが重要です。資料では、下水道DX技術を導入している地方公共団体の割合をR6年度21%からR9年度100%へ引き上げるKPIも示されています。
第6次社会資本整備重点計画から試験に出そうな本命テーマを整理すると、インフラマネジメント、人口減少を踏まえた再編・集約、老朽化対策の重点化、事前防災、流域治水、グリーンインフラ、資源循環、担い手確保、広域化・群マネ、そしてDXです。ただし、これらを単独の論点として覚えるだけでは弱いです。
大事なのは、人口減少社会への対応、持続可能性、多面的価値の創出、実行基盤の確保という大きな流れの中で結び付けて理解することです。
答案でも、「何を整備するか」だけで終わらせず、「なぜ今それが必要か」「どう持続させるか」「他分野とどう連携するか」まで書けると、一段深い答案になります。第6次計画は、その方向をかなりはっきり示しています。
| 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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