2026/05/07
第6次社会資本整備重点計画の概要が公表されました。
技術士試験、とくに建設部門の必須問題では、こうした国の上位計画の考え方がそのまま出題の背景になることが少なくありません。
今回の計画で最初に押さえるべきなのは、社会資本整備を単なる施設整備の話ではなく、人口減少、老朽化、災害、脱炭素、DXといった社会課題への対応として位置付けている点です。
資料では、人口減少等がもたらす地域の危機、インフラ老朽化の更なる進行、災害の激甚化・頻発化、地球環境を巡る世界的な潮流、デジタル・新技術の急速な進歩などが、我が国の社会経済情勢の変化として整理されています。
つまり、今後の試験では、単独の技術テーマを問うだけでなく、こうした複合課題を背景にした総合的な視点が強く求められるはずです。
この計画の最大の特徴は、「インフラマネジメントをインフラ政策の核心に据える」と明記していることです。
国民の共有財産であるインフラを、社会経済のニーズに合わせて効果的に活用し、価値を創出するという考え方が前面に出ています。ここはかなり重要です。従来のように新設中心の発想ではなく、既存ストックの質的改善、高度化、再編、長寿命化をどう進めるかが中心になっています。
試験で問われるなら、「今後の社会資本整備における技術者の役割」や「人口減少社会におけるインフラのあり方」といったテーマで、この発想転換を書けるかどうかが差になります。
計画では4つの重点目標が示されています。
第1は「活力のある持続可能な地域社会の形成」、
第2は「強靱な国土が支える持続的で力強い経済社会」、
第3は「インフラ分野が先導するグリーン社会の実現」、
第4は「戦略的・計画的な社会資本整備を支える基盤の強化」です。
これらは別々のテーマに見えますが、実際には相互に結び付いています。たとえば、人口減少に対応した地域の再編は老朽化対策とも直結し、防災・減災は経済成長の基盤でもあり、グリーン化は新たな価値創出にもつながります。試験では、この相互関係を書ける答案のほうが強いです。
重点目標Ⅰで特に試験に出そうなのは、「地域の将来像を踏まえたインフラの再構築」です。
資料では、老朽化対策の計画と立地適正化計画などのまちづくりの計画を一体的に策定し、インフラの集約・再編、修繕・更新を進め、地域の将来像に即してストックを適正化するとしています。これは非常に重要です。人口減少社会では、従来どおり全部を同じ規模で更新するのではなく、集約、再編、ダウンサイジングまで含めて考えなければなりません。
つまり、今後の試験では「老朽化対策」だけを書いても浅く、「まちづくりと連動したインフラ再編」まで書けるかが問われる可能性があります。
今回の資料で非常に目を引くのが、埼玉県八潮市の道路陥没事故の教訓を踏まえた老朽化対策の徹底です。
資料では、インフラの点検・調査を技術化・重点化するとしています。ここで重要なのは、ただ点検件数を増やすという話ではなく、安全上のハザードや社会的影響を踏まえて、点検箇所や方法を重点化するという考え方です。限られた人員と予算の中で、どこを優先して守るのかというマネジメントの視点が前面に出ています。
試験では、「老朽化インフラ対策を述べよ」という問題が出ても、「予防保全」だけでは足りません。「影響度を踏まえた重点化」「見える化」「住民参画」まで触れると、一段上の答案になります。資料でも、地方公共団体の取組状況の見える化や、住民への分かりやすい発信による主体的参画の機運醸成が示されています。
重点目標Ⅰでは、防災や老朽化だけでなく、包摂的な共生社会に向けた地域づくりも示されています。
バリアフリー、ユニバーサルデザイン、ジェンダー主流化、安全な移動空間、歩きたくなるまちなかづくりなどです。これは一見するとソフトなテーマに見えますが、近年の試験ではこうした「生活の質」や「誰一人取り残さない」視点が重視される傾向があります。
つまり、今後の社会資本整備は、単に丈夫で便利であればよいのではなく、包摂性や快適性まで含めた質が問われる時代に入っているということです。
重点目標Ⅱでは、「持続的で力強い経済成長の実現」と「暮らしと経済の礎となる防災・減災、国土強靱化」が並んでいます。
ここで大事なのは、この2つを別物として扱っていないことです。人流・物流ネットワークの整備、戦略分野の国家プロジェクトに対応した周辺インフラ整備、革新的イノベーションの社会実装が示される一方で、能登半島地震の教訓を踏まえた事前防災、TEC-FORCE等の体制・機能拡充、防災拠点の強化が示されています。つまり、成長のためのインフラと、守るためのインフラは一体であり、強靱性があってこそ持続的な経済社会が成り立つという考え方です。この視点は試験でかなり使いやすいです。
重点目標Ⅱの中でも本命は「事前防災」です。
資料では、土地利用も含めたハード・ソフト一体の防災、水災害に対する流域治水、巨大地震に備えた各インフラの耐震性向上、災害時に機能する陸海空ネットワークの構築が示されています。これは、災害後の復旧よりも、平時から備える方向に軸足が移っていることを意味します。
したがって、防災を論じる問題では、施設整備だけでは不十分です。土地利用、避難、情報、訓練、体制整備、広域支援まで含めた総合的な答案が求められるでしょう。
| 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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