2025/10/09
技術士試験を受験するにあたり、最初に直面する大きな選択が「どの部門・科目を受けるか」です。建設、機械、電気電子、化学、環境…と多岐にわたる部門の中から自分が受ける部門を決め、さらにその部門に設定されている複数の科目のうち一つを選択する必要があります。
この「最初の一歩」を誤ると、その後の学習の効率や本番の得点に大きな影響を及ぼします。逆に、ここを適切に判断できれば、自信を持って学習を進められ、合格への近道となります。
機械部門であれば、専門科目として以下の6つが用意されています。
受験者の多くは「自分は設計業務を担当しているから機械設計だろう」と直感的に判断しがちです。しかし、この判断は必ずしも正解とは限りません。実務経験がそのまま出題範囲に直結するわけではなく、大学や大学院、専門学校で学んだ基礎知識との相性も大きく関わってくるからです。
つまり、実務経験だけを拠り所にするのは危険であり、もう一段深く考える必要があります。
科目選択で重視すべきは「過去問題」
では、何を基準にすればよいのか。答えはシンプルで、「過去問題の確認」です。
特に注目すべきは専門知識を問う「Ⅱ-1」の問題です。
このⅡ-1は、その科目に必要な基礎知識・専門知識を幅広く網羅的に問うものです。問題文に並ぶキーワードを見て「知っている」「理解できる」と感じられるかどうか。それが科目選択の最大の判断基準となります。
逆に、出題文にある基本用語を見てもピンと来ない、あるいは断片的にしか分からないと感じる科目を選んでしまうと、勉強のスタート地点から大きなハンデを背負うことになります。
実務経験と学習基盤を照らし合わせる
過去問題を確認する際には、実務経験と学習基盤の両面から照らし合わせることが大切です。
例えば、大学時代に熱力学や流体力学をしっかり学んだ人であれば、実務で設計に携わっていたとしても「熱・動力エネルギー」や「流体機器」の方が馴染みやすい場合があります。逆に、実務経験は強くても、学習の基礎が弱い分野を選んでしまうと、Ⅱ-1で得点できずに苦戦する可能性が高いです。
技術士試験は「総合的な知識と実務能力を兼ね備えた技術者」を評価する試験です。実務だけでも、学習だけでも不十分です。過去問を通じて、自分の知識と経験の重なり合う領域を見極めることが重要です。
過去問確認の具体的な進め方
過去問を確認する際は、単に1年分を眺めるだけでは不十分です。最低でも直近5年分、できれば10年分を確認するのが望ましいです。その際、以下の視点を持ってください。
このように過去問を精査することで、自分に最も適した科目が見えてきます。
Ⅱ-1の科目選択が合否に直結する理由は明快です。技術士試験では必須科目と選択科目が組み合わされますが、専門知識を問うⅡ-1はその基盤となる部分です。ここで得点できなければ、Ⅱ-2やⅢでどれだけ健闘しても全体の点数が伸びません。
つまり、Ⅱ-1を安全に突破できる科目を選ぶことが、最も合理的な戦略です。
科目選びを誤った場合のリスク
誤った科目を選択すると、以下のリスクに直面します。
これらはすべて合格を遠ざける要因です。科目選びは単なる入り口ではなく、試験全体の成否を左右する決定打であることを忘れてはいけません。
最後に、科目選択で迷ったときのポイントをまとめます。
試験は長丁場です。最後まで勉強を続けられるのは、「この科目ならやれる」という確信があるからです。
まとめ:科目選択は戦略の出発点
技術士試験の科目選択は、単なる形式的な決定ではなく、合格戦略の出発点です。
「自分の業務に近いから」「学校で学んだから」だけで決めるのは危険です。必ず過去問を確認し、自分にとって最も安全で、得点を積み重ねられる科目を選びましょう。
選んだ科目が合っていれば、その後の勉強がスムーズに進み、合格への道がぐっと近づきます。逆に、ここでの判断を誤ると、どれだけ努力しても空回りしてしまう恐れがあります。
これから受験を考えている方は、ぜひ一度腰を据えてⅡ-1の過去問題を確認してください。その作業こそが、あなたを合格へと導く第一歩になるはずです。
![]() | 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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