必須の課題は広い観点・Ⅲの課題は専門的な観点｜講師匠習作の技術士応援ブログ

2025/04/24

必須の課題は広い観点・Ⅲの課題は専門的な観点

技術士試験においては、受験者が論述力をもって技術的課題にどう向き合い、どう解決策を導き出すかが評価の鍵となります。中でも、筆記試験における記述式の課題（必須科目および選択科目）は、その観点の違いを理解しておくことが、的確な答案作成への第一歩です。

今回は、「必須の課題は広い観点・Ⅲの課題（選択科目）は専門的な観点で考える」というテーマで、それぞれの科目の目的や問われる力の違い、答案作成の際に注意すべきポイントについて掘り下げていきます。

今回は、技術士試験に合格するための効果的な学習計画、試験当日の対応、そして合格を勝ち取るためのポイントについて詳しく解説します。

1.必須科目：広い視点で“技術部門全般”を俯瞰する

技術士試験の「必須科目」とは、技術部門全般にわたる課題に対して、専門知識や応用能力、そして問題解決力および課題遂行能力をもって取り組むことが求められる記述式の設問です。出題形式は600字×3枚で40点、2問出題され1問を選択解答する形です。

評価の観点は以下の3つ：

・専門知識…特定分野にとどまらない“汎用的”な技術知識の理解と説明

・応用能力…実務に基づく柔軟な判断力や説明力

・問題解決力と課題遂行力…社会課題の本質を見抜き、俯瞰的に解決策を構想する力

つまり、「必須科目」は、エンジニアとして広範な社会的視野をもち、部門の枠を越えた技術課題をどう認識し、どう解決すべきかを問うものです。

単なる専門技術の知識披露ではなく、“技術者としての姿勢”や“思考の広がり”が問われているのです。

具体的な出題例としては、

「自然災害に対応する社会インフラの強靭化について、技術者としての提案を述べよ」

「カーボンニュートラル社会の実現に向けた課題とその解決策を論ぜよ」

など、現代社会が抱える多面的な課題が取り上げられます。

このような課題に対しては、

・社会的背景の把握（法制度、行政方針、国際動向）

・異なる技術領域との関連性の理解（複合領域）

・利害関係者の視点を踏まえた合理的提案（住民・自治体・企業など）

が欠かせません。

2. 選択科目：専門技術者としての“深さ”を見せる

一方で、「Ⅲの課題」とされる選択科目は、自身が受験する“技術部門”に特化した内容であり、より専門的かつ実務に即した観点からの分析と提案が求められます。

こちらも600字×3枚で30点、2問出題・1問選択解答という形式です。

問われるのは主に次のような力です：

・専門分野の最新課題や課題構造の的確な把握

・多角的分析を踏まえた合理的な解決手段の提案

・計画立案、プロジェクトマネジメント的視点

選択科目では、自分が日々向き合っている業務の中から実感のある課題をベースに、専門技術者としての“知識の深さ”“現場感覚”“技術的判断力”をもって答えることが求められます。

例えば建設部門や上下水道部門であれば：

・老朽化する下水道インフラに対する更新計画のあり方

・脱炭素社会に向けた舗装技術の転換と施工管理

といった問題に対し、技術的根拠や経験知を交えて論理的に答える必要があります。

選択科目では、抽象的な提言よりも、

・具体的な数値や制度、実例を交えた記述

・技術者としてのリスク判断やコスト意識

・継続性・持続性を意識した課題遂行案

などの“専門的リアリティ”が問われる点が特徴です。

匠　習作（たくみ　しゅうさく）　プロフィール

1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。

次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。

匠習作技術士事務所代表技術士
プロフェッショナルエンジニア養成コンサルタント、医療機器業界転進コンサルタント、医工コーディネーター日本技術士会会員・日本機械学会会員・失敗学会会員、人工知能学会会員、日本医工ものづくりコモンズ会員、日本シャーロックホームズクラブ会員、放送大学大学院在学中

『講師匠習作の技術士応援ブログ』は、スタディング受講者様へお送りしたメールマガジンの内容をウェブ用に一部抜粋・編集して掲載しております。