2025/01/23
技術士試験対策に使える「論文・レポートの基本」を紹介
『論文・レポートの基本』2012年03月初版
石黒圭著・日本実業出版
この本は、論文やレポートを執筆する際の正確な表記に焦点を当て、特に「漢字と平仮名の書き分け」「読点の打ち方」「記号の使い方」の3点について詳しく解説しています。
1.漢字と平仮名の書き分け
著者は、漢字と平仮名の書き分けにおいて、以下の3つの基準を提案しています。
語種による書き分け:
漢語(音読み)は漢字で、和語(訓読み)は平仮名で表記する方法。
例:「行動する」は漢字、「おこなう」は平仮名。
メリット:語種を明確に区別できる。
デメリット:漢字が多用され、読みにくくなる可能性がある。
機能による書き分け:
名詞、動詞、形容詞などの実質語は漢字で、助詞や助動詞などの機能語は平仮名で表記する方法。
例:「見る」は漢字、「みた」は平仮名。
メリット:速読に適している。
デメリット:実質語と機能語の区別が難しい場合がある。
常用漢字表:
常用漢字表に掲載されている漢字は漢字で、掲載されていない漢字は平仮名で表記する方法。
メリット:表記の基準が明確。
デメリット:常用漢字表に掲載されている漢字をすべて覚える必要がある。
著者は、上記3つの基準を総合的に判断し、バランスを取りながら漢字と平仮名を使い分けることを推奨しています。さらに、表記の揺れを防ぐために、迷いやすい単語のリストを作成しておくことを勧めています。
2.読点の打ち方
読点の役割は、文の内部に隙間を作り、意味の切れ目を明確にすることです。読点を適切に打つことで、文の構造が分かりやすくなり、誤読を防ぐことができます。読点を打つ際には、以下の点に注意する必要があります。
修飾・被修飾の関係を明確にする:
読点を打つことで、どの語句がどの語句を修飾しているかを明確にする。
例:「子どもは、腹ばいになって寝ていた人の顔に落書きをした。」→腹ばいになっているのは「人」。
文の前後をまとめて見せる:
読点を打つことで、文の前後をそれぞれまとまりとして認識させる。
例:「子どもは腹ばいになって、寝ていた人の顔に落書きをした。」→腹ばいになっているのは「子ども」。
文全体の構造を意識する:
文の骨格となる部分と、そこから枝分かれする部分との関係を考えながら、読点を打つ。
3. 記号の使い方
記号は、文意を明確にするために重要な役割を果たします。特に、カギカッコと丸カッコの使い方には注意が必要です。
カギカッコ:
引用や論文名、書名を示す場合にのみ使用。
強調のために使用するのは避ける。
丸カッコ:
注で補足説明できる内容は注に回し、本文中では使用を控える。
まとめ
論文やレポートを執筆する際には、漢字と平仮名の使い分け、読点の打ち方、記号の使い方という3つの基本的なポイントを踏まえ、正確な表記を心がけることが重要です。著者の提案する基準やリストを活用することで、表記の統一性を高め、質の高い論文を作成することができます。
本文で紹介されている例をより詳しく見てみましょう。
漢字と平仮名
「おこなう」と「行う」
本文では、「おこなう」を「行う」と表記しても間違いではないが、一つの論文内で混在しているのは良くないとされています。
これは、表記の統一性を重視しているためです。論文全体で一貫した表記にすることで、読者は内容に集中することができます。
「取り引き」と「取引」
「取り引き」は送り仮名を付けて、「取引」は送り仮名を付けずに表記されています。
送り仮名の有無は、文脈や単語の意味によって判断する必要があります。
「規定」と「規程」
「規定」と「規程」は同音異義語であり、それぞれ意味が異なります。
「規定」は、規則や基準などを定めることを意味します。
「規程」は、規定された内容を文書にしたものを意味します。
読点と記号
読点
「教皇クレメンス7世は、妃であったキャサリン・オブ・アラゴンと離婚するために婚姻の無効を宣言するように願いでたヘンリー8世の依頼を却下した。」
この文では、「教皇クレメンス7世は」の後に読点を打つことで、「妃であった」にかからず、「依頼を却下した」にかかるようにしています。
もし「離婚するために」の後に読点を打つと、教皇に妃がいることになり、意味が通じなくなってしまいます。
記号
「100年」や「建てたときの建材の質が低いこと」「建てたあとのメンテナンスが不十分であること」
これらの表現では、カギカッコを強調のために使用しています。
論文では、カギカッコは引用や論文名を示す場合にのみ使用するのが原則です。
強調したい場合は、別の表現方法を用いる必要があります。
これらの例からもわかるように、論文やレポートを執筆する際には、細部にわたって注意を払い、正確な表記を心がけることが重要です。