これまでの口頭試験

2024/09/19

これまでの口頭試験

以下は、2023年度の技術士口頭試験に関する詳細な説明です。この試験の形式は、2019年度に改正された内容をほぼ踏襲しています。また、2024年度の口頭試験も概ね同じになると思います。

(1) 口頭試験の内容
技術士の口頭試験では、技術士としての資質や能力(コンピテンシー)が厳しく評価されます。試験は以下の構成で行われます:

  1. 実務能力の評価(合計60点)
    • コミュニケーション(30点): 技術者としての意思疎通の能力が評価されます。例えば、発注者や協力会社とのコミュニケーションの方法や、住民への説明の仕方などが問われます。
    • リーダーシップ(30点): プロジェクトや業務の中でリーダーシップをどう発揮したかが評価されます。対立の解決方法やチームのまとめ方などが具体的に問われます。
    • 評価(30点): 自分の業務の成果やプロジェクトの進捗をどう評価しているかが問われます。自己評価だけでなく、プロジェクト全体に対する客観的な評価も重要です。
    • マネジメント(30点): プロジェクトの経営資源(人材、設備、資金、情報など)をどう管理し、適切に配分したかについて評価されます。PDCAサイクルの実践や、リスク管理などが問われます。
  2. 適格性の評価(合計40点)
    • 技術者倫理(20点): 技術士として求められる倫理観が問われます。例えば、社会的責任や持続可能な開発に対する取り組み、業務における公正さなどが評価されます。
    • 継続研さん(20点): 自己研鑽に対する姿勢が評価されます。どのようにして新しい技術を学び、スキルを維持・向上させているか、具体的な取り組みが問われます。

試験の合格基準は、各項目で60%以上の得点を獲得することです。試験時間は原則として20分ですが、必要に応じて10分程度の延長が可能です。ただし、延長は説明が不十分である場合に限られるため、20分以内で試験が完結するように準備をすることが重要です。


(2) 実務経験証明書の作成
口頭試験で最も重要な書類の一つが、実務経験証明書です。この証明書は、受験者が過去にどのような業務を経験してきたかを証明するもので、口頭試験ではこの内容に基づいて質問がされます。

    • 証明書の内容: 5行以内でまとめた業務内容と、720文字以内で詳述した業務内容が含まれます。これらは試験官によって受験者のコミュニケーション能力、リーダーシップ、評価能力、マネジメント能力を評価するための基準となります。
    • 筆記試験との関連: 口頭試験では、筆記試験で記述した論文の内容も試問される可能性があります。そのため、筆記試験と実務経験証明書の内容が一貫していることが望ましいです。

(3) 再現論文の作成
口頭試験に備えて、筆記試験の内容を再現した論文(再現論文)を作成しておくことを推奨します。

    • 作成方法: 筆記試験終了後、記憶が新しいうちに数字や定義、キーワードを問題用紙の余白にメモしておきます。これを元に、筆記試験で書いた内容を再現します。
    • 最新情報の追加: 再現論文をもとに、関連する最新技術や情報を調べ、口頭試験で問われた際にアップデートされた知識を反映した回答ができるように準備します。

(4) 経歴に関する試問内容
受験申込時に提出した実務経験証明書に基づき、経歴についての質問がされます。この試問では、受験者の技術士としての実務能力と今後の適格性が評価されます。

    • 質問の内容: 例えば、コミュニケーション能力については、発注者や協力会社、住民とのやり取りがどうだったか、具体的な状況が問われます。また、リーダーシップに関しては、どのようにしてチームをまとめ、問題を解決したのかが問われます。
    • 専門知識の確認: 経歴に記載された技術的内容に関連して、専門知識について深掘りされる質問が行われる可能性があります。例えば、コンクリートの劣化に関する業務に携わっていた場合、「塩害」や「中性化」「アルカリシリカ反応」などに関する質問が予想されます。

(5) 筆記試験の答案に関する試問内容
筆記試験で記述した内容についても、口頭試験で質問される可能性があります。

    • 準備のポイント: 筆記試験で書いた内容を再度確認し、特に技術的な部分についてはしっかりと説明できるように準備します。再現論文が役立つため、これをもとに技術的な解説をしっかりと整理しておくことが重要です。

(6) 技術者倫理に関する試問内容
技術者倫理は技術士にとって非常に重要な要素です。日本技術士会では「技術士倫理綱領」を制定しており、これに基づいた質問がされます。

    • 試問の内容: 綱領に示された10項目を理解し、自分の業務経歴と結びつけて回答できるように準備します。試験官が求める倫理観をしっかりと理解し、それに沿った回答ができることが求められます。

(7) 継続研さんに関する試問内容
技術士の資格更新制度が導入される可能性があるため、継続研さんに関する質問も重要です。

    • 継続研さんの内容: 継続的にどのような研修や学習を行っているか、具体的な事例を挙げて説明できるようにします。自分の弱点を補うための研さん内容が求められます。
    • 背景: 日本は、主要国の中で技術士資格の更新制度が整備されていない数少ない国です。将来的には更新制度が導入される可能性が高く、継続研さんの重要性が増しています。

これらの要素をしっかりと理解し、試験の準備を進めることが合格への鍵となります。


No Image 匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール

1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。

次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。

匠習作技術士事務所代表技術士
プロフェッショナルエンジニア養成コンサルタント、医療機器業界転進コンサルタント、医工コーディネーター日本技術士会会員・日本機械学会会員・失敗学会会員、人工知能学会会員、日本医工ものづくりコモンズ会員、日本シャーロックホームズクラブ会員、放送大学大学院在学中

『講師匠習作の技術士応援ブログ』は、スタディング受講者様へお送りしたメールマガジンの内容をウェブ用に一部抜粋・編集して掲載しております。


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