2024/09/05
有名な本なので、ご存知の方も多いと思います。
今回は、第1章を要約してみました。多くの部門で役に立つと思います。
第1章の続き: 安全工学におけるリスクマネジメントとシステム安全
1. リスクマネジメントのプロセス
安全工学におけるリスクマネジメントは、リスクを識別し、評価し、制御する一連のプロセスを通じて実施されます。リスクの識別では、危険源を特定し、そのリスクがどの程度の頻度で発生しうるかを分析します。次に、リスク評価では、発生した場合の影響を評価し、どのリスクが許容できるか、どのリスクが低減すべきかを決定します。最終的に、リスク制御では、リスクを低減するための具体的な対策を講じます。
リスクマネジメントは、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)に基づいて継続的に改善されるべきであり、これにより安全性の向上が図られます。
2. システム安全の概念
システム安全とは、システム全体が安全に動作するように設計され、運用されることを指します。ここで重要なのは、システムの各コンポーネントが単独で安全であるだけでなく、システム全体としての安全性が確保されることです。これは、複数のコンポーネント間で相互作用が発生する場合、その相互作用によって新たなリスクが生じる可能性があるためです。
システム安全のアプローチには、フェイルセーフ設計やフェイルオペレーショナル設計などが含まれます。フェイルセーフ設計では、システムが故障した場合でも安全な状態に移行するよう設計されます。フェイルオペレーショナル設計では、システムが故障しても、一定期間は安全に動作し続けることが求められます。
3. 安全文化の重要性
技術的な対策だけでなく、組織全体の「安全文化」も非常に重要です。安全文化とは、組織の全てのメンバーが安全を最優先に考え、リスクを低減するための行動を積極的に取る文化を指します。これには、トップマネジメントから現場の作業者までが一貫して安全に対する意識を持ち、コミュニケーションを密にすることが含まれます。
安全文化の醸成には、教育や訓練が不可欠であり、特に現場で働く技術者がリスクに対する意識を高めることが求められます。また、組織内でのインシデント報告やフィードバックシステムを整備し、リスクが顕在化する前に対策を講じることが重要です。
4. グローバル化と国際安全基準の適用
安全工学の分野では、グローバル化が進展する中で、国際的な安全基準の適用がますます重要になっています。ISO(国際標準化機構)やIEC(国際電気標準会議)といった国際機関が定める安全基準は、各国での規制の基礎となり、製品やサービスの安全性を確保するための共通の指標となっています。
日本においても、これらの国際基準に準拠することで、国内外での競争力を維持しつつ、安全性を高めることが求められています。特に、輸出を行う企業にとっては、国際基準への対応が重要であり、これに対応するための人材育成や技術開発が進められています。
結論
第1章全体を通じて、安全工学の基本的な概念とリスクマネジメントの重要性が強調されています。技術者は、リスクを低減し、安全なシステムを設計・運用するために、技術的な知識だけでなく、安全文化の構築や国際基準への適応も含めた包括的なアプローチを取る必要があります。この章は、技術者が安全を最優先に考え、社会に対して責任を持つことの重要性を再認識させる内容となっています。
この章では、安全工学の基本的な概念とその重要性について解説されています。安全とは「許容できないリスクからの解放」であり、リスクとは危害が発生する確率とその大きさの組み合わせであると定義されています。安全を確保するためには、リスクを低減するための取り組みが不可欠です。具体的には、機械や設備に潜在する危険源を認識し、リスクを評価し、適切な安全対策を講じることが求められます。
また、安全と安心の違いについても言及されています。安全は技術的に評価・測定可能なものである一方で、安心は個々人の主観的な感情であり、技術的な安全が確保されていても、必ずしも安心を得られるわけではありません。
さらに、安全性と信頼性の違いについても説明されています。信頼性の高い機器や設備は故障が少ないため、安全性が高いとみなされがちですが、実際には信頼性と安全性は必ずしも一致しません。安全工学では、システムが正常に動作しない場合でも安全性を確保することが重要とされ、これを「システムの抵抗性」と表現しています。
最後に、国際的な安全規格についても触れられています。安全工学における国際規格は、ISOやIECといった国際機関によって制定されており、これらの規格は安全を維持し、リスクを低減するためのグローバルな基準となっています。日本でも労働安全衛生法を中心に、これらの国際規格を参考にした安全対策が進められていますが、国際規格が求める最高水準の技術にはまだ追いついていない部分もあります。
匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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