総合技術監理部門を目指す皆さんへ　｜講師匠習作の技術士応援ブログ

2024/04/11

総合技術監理部門を目指す皆さんへ　

今日はいつもと違うことを考えて書いてみようと思いました。
現在、私たちは高度技術が社会の隅々まで影響を及ぼしている時代に生きています。

また、技術士はそんな社会の技術的な課題を見つけ、解決するために存在します。
これは企業の運営にも大きく関わってきており、かつては裏方的な存在だった技術が、今では企業経営の中心的な役割を担っています。
例えば、新しいビジネスを立ち上げる際に最新技術を利用することや、国際的な技術基準を確立する計画、競合する企業に先んじるための技術システムの開発、新製品の安全性や環境への影響を評価すること、そして、世界的な情報ネットワークを通じて顧客情報を効率的に収集する方法などが、企業経営の重要な決定や戦略の中心になっています。
これらの扱い方が企業の成功や失敗を左右するほどになりました。

技術関連の事項を扱うためには、最新の技術に関する深い知識が必要ですが、それよりも重要なのは、技術が企業経営や社会にどのような影響を与えるかを理解し、その技術を活用して革新的な経営を進める能力です。これを「技術経営」と呼び、この分野では技術を有効に使って経営することを重視しています。

総合技術監理部門は、まさにこの領域を扱います。
多くの産業では、技術経営の実践が既に始まっており、効果的な技術戦略を立てるための部署を設置したり、新商品や新事業に貢献する研究所を運営したり、新技術の開発を進めるために他の機関やユーザーと協力しています。
しかし、これらの取り組みはまだ試行錯誤の段階にあり、従来の経営学ではこれらの技術的な事項を十分に扱えていないという問題があります。

企業が必要としているのは、「技術経営学」という新しい学問の確立です。これは技術経営の全体像を提供し、具体的なマネジメントや行動の指針を示すものですが、その確立は容易ではありません。
技術経営が実践の重要な分野として登場してからまだ新しく、理工学と経営学という異なる文化を持つ広大な分野を統合して発展させる必要があるからです。
しかし、技術経営学を確立するための第一歩を踏み出すことは急務です。これは産業界の現場だけでなく、教育の現場でも求められていることです。日本でも技術経営を専門とする大学院が多く設立され、標準的な教科書が必要とされているため、この新しい学問の確立は、実学としても大きな推進力になるでしょう。

残念ながら、技術経営「MOT」とも言われていますが、こちらが先に有名になりました。
総合技術監理部門は、先を越されたことになります。
しかし、それはそれで、良いと思います。
総合技術監理部門を目指す皆さん、曖昧な領域で試験対策も大変ですが、上記のことを考えてみましょう。
やるべきことは、たくさんあります。

匠　習作（たくみ　しゅうさく）　プロフィール

1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。

次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。

匠習作技術士事務所代表技術士
プロフェッショナルエンジニア養成コンサルタント、医療機器業界転進コンサルタント、医工コーディネーター日本技術士会会員・日本機械学会会員・失敗学会会員、人工知能学会会員、日本医工ものづくりコモンズ会員、日本シャーロックホームズクラブ会員、放送大学大学院在学中

『講師匠習作の技術士応援ブログ』は、スタディング受講者様へお送りしたメールマガジンの内容をウェブ用に一部抜粋・編集して掲載しております。