2023/06/22
最近、防災の問題ではよく見るキーワードがあります。
それは「正常性バイアス」です。
正常性バイアスとは、心理学用語で、異常事態が起きてもその状況を正常と捉え、心を落ち着かせようとする心理的な働きを指します。
日々の生活を送る中で必要な機能ですが、度が過ぎると非常事態でも異常と認識しないため、避難などの対応が遅れ、災害時などに被害が拡大する可能性があります。
したがって、常に災害対応を考え、異常事態を楽観視せず、冷静に行動することが重要です。
と言っても、人間は常に緊張して生きていくことなど出来ません。
なので、どうしても正常性バイアスが働きます。
これを克服するのは容易ではありません。
それでも、効果的と言われている3つの手法があります。
リスクに正常性バイアスを入れた場合の対策と考えて下さい。
情報の理解と受け入れ
まず、正常性バイアスが自分にどのように影響を与えているか理解し、それを受け入れることが重要です。自分が危険な状況に対して無意識に過小評価していることを自覚することで、正常性バイアスを認識しやすくなります。
準備と訓練
緊急事態に対する準備と訓練を行うことで、正常性バイアスを克服することが可能です。
これは、災害訓練や緊急時の避難計画などを定期的に行うことを含みます。
これにより、緊急事態が発生した場合に迅速に行動を取れるようになります。
(たぶんこれがもっとも効果を発揮するでしょう)
リスク評価
リスクの適切な評価を行い、その結果を元に行動を計画することも重要です。
危険な状況を正確に理解することで、正常性バイアスによる過小評価を防ぐことができます。
定期的なレビュー
状況が変わるたびに、あなたの環境や状況の評価を見直すことも有効です。これにより、新たなリスクや変化に対する認識を更新し、必要な行動を考えることができます。
機を逃さずに行動する
時間が経つにつれて、周囲の行動が落ち着いてしまう(一定の空気感が出来てしまう)と、新たに動き出すことが難しくなります。2つ目の「行動のパッケージ化」を実行するためにも、機を失うことなく行動し、場の主導権を取ることが必要です。
もう一つ、これも重要です。正常性バイアスは、人数が多いほど掛かりやすいのです。
実験室内で煙を発生させ、危険を感じて逃げるまでの時間を「室内に1人」「室内に3人」の場合に分けて測定した研究によると、煙に気付くまでの時間は両者ともほぼ同じでした。
正常性バイアスが原因で大きな事故になった例が1つあります。
2003年に韓国で発生した、乗客による放火で車両火災が起こった「大邱地下鉄放火事件」です。
煙が車両内に充満していたにもかかわらず、乗客は座ったまま待機していたため死者192名、負傷者146名という大惨事になりました。「正常性バイアスによって避難が遅れた」点が大きな要因と考えられています。
この事件に関しては「被害はたいしたことがないのでその場に留まるように」という旨の車内放送が流れたという証言もあります。こうした対処が正常性バイアスを助長した可能性もあります。
防災テーマの問題を考えるとき、どんなに対策しても正常性バイアスのリスクは最後まで残ります。
匠 習作(たくみ しゅうさく) プロフィール
1962年生まれ。北海道函館市出身。本名は菊地孝仁。1988年より医療機器メーカーに勤務し、1991年20代で工場長に就任する。2014年までの23年間、医療機器製造工場の生産管理、人材育成、生産技術に携わる。2012年技術士機械部門、総合技術監理部門を同時に合格し、2016年に独立。 次世代のエンジニアを育てるべく、技術士試験対策講座を主催する。日本で初めてグループウェアを使った通信講座であり、分かりやすい解説、講師と受講者1対1を大事にする指導で人気講座となる。また、科学技術全般を、一般の人・子供向けに分かりやすく説明するサイエンスカフェなども自主開催。機械学会・失敗学会では、事故事例の研究などを行い、これも一般の人向けにセミナーなども開催している。 匠習作技術士事務所代表技術士 |
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