税理士試験の簿財2科目はボリュームが多く、難しい試験です。そんな試験にどのように挑み、どう攻略すればよいのか。また、試験直前期から当日にかけて何をすべきなのか。今回も、税理士講座 簿財2科目主任講師の中村博之先生にたっぷりとお話を伺いました。
これらの試験を難しく感じさせる最大の理由は、出題量が多いことと、「こんな問題、誰が解けるんだろう」と思いたくなるほど難しい問題が複数出ることです。
2時間の試験時間に対して3時間分の問題が出るので、2~3割は手をつけられずに終わります。ということは、どんなに難しい問題があっても、それがその2~3割の中に入っていればいいわけで、自分の得意な形式・見慣れた形式の問題をまず優先して解き、解けない問題は思い切って捨てる。そういう「取捨選択」と「解く順序」が合否のカギを握るのだと思います。
合格できるのは、難しい問題に出会ったときにさっさと飛ばせる人です。「これだけ勉強してきた自分が難しいと感じるんだから、ほかの受験生にとっても難しいはずだ」というような判断が、本試験の場でできるかどうかが合否に大きく影響します。
一方、どんなに難しくても一度手をつけ始めた問題を途中でやめる踏ん切りがつかない人は、ほかの答案を埋める時間が足りなくなって、思うような結果が出ないこともあります。特に、実力のある人ほど難しい問題に深入りして失敗してしまうケースも見受けられるので、実力のある方は気をつけたほうがいいですね。
あとは成績が伸び悩んだり、残念ながら不合格となってしまったりしたときに、「教材が悪い」「講師の教え方が悪い」「演習問題の数が少ない」などとだれかのせいにする人。こういう人も受かるのは難しいでしょう。自分と同じ講義や同じ教材で学習して合格している人が多数いるのです。そうである以上、失敗の原因が自分のどこにあるのかを分析し、失敗を反省して次につなげられる人が合格できる人なのだと思います。
まずは講義動画をひととおり観ていただきたいですね。講義動画で使用したスライドはすべてテキストにも載せていますし、講義では触れなかった説明もテキストに盛り込んであるので、テキストにも必ず目を通すようにしてください。その後、きちんと頭に入っているかを確かめるために、単元ごとの巻末にあるスマート問題集を解きましょう。
スマート問題集である程度確認ができたら、次に「トレーニング」で実践的な演習を行います。特に計算問題は実際に問題を解いてこそ身につくものなので、計算の基礎力を固めるという意味でもトレーニングにはしっかり取り組んでほしいですね。ただし、単元によってはテーマの説明だけで終わっていてトレーニングのないものもあります。ここまでがひとつの日常的な学習のサイクルです。
ある程度講義が進んでくると、「テーマ別演習」と「実力テスト」があります。この2つに取り組むタイミングはカリキュラムで決まっているので、適切な時期が来たら取り組んでみてください。やってみることで、自分の”現在地”がわかります。自信がなくてつい避けてしまう方もいるかもしれませんが、この2つの演習を通して、どこができていて、どこができていないのかが見えてきます。そうすることで、勉強し直すべきポイントが把握できますから。
また、オプション講座にはなりますが、直前期には直前対策講座もご用意しています。全9回の答案練習があり、最初の3回は直近3年分の過去問、あとの6回はスタディングオリジナルの問題をそれぞれ解いていただきます。普段使う教材は何度も回していただく前提で作っているのでそれほど難易度は高くないのですが、過去問は非常に難しい問題もあるので、教材と本試験のとのレベルの差に愕然とする受講生さんも少なくありません。ですが、はじめに本試験の量の多さや難易度、最終的に到達すべきレベルを実感してもらい、これから先何をすべきかを把握していただきたいとの意図で、このようなカリキュラムを組んでいます。なので、直前対策講座では最初にぎゃふんと言わされると思ってくださいね(笑)。
1週間のサイクルで学習計画を立てることですね。このとき、不測の事態に備えて、7日間ではなく6日間でこなせる分量でスケジュールを組むのがコツです。最初の6日で予定していた勉強が終わった場合は、ご褒美で1日休みとしてもよいでしょう。一方、万が一1日勉強できなかった日があれば、その日の分は予備日に回すようにします。
このとき、一定のサイクルで既習範囲の復習も計画に入れるようにしましょう。一度学んだことは復習しなければ忘れてしまうからです。新しいことを学びつつ、振り返る時間も確保してください。日々のタスクをこなしていけば達成感もありますし、「予定通りに進んでいるから、このままいけば大丈夫」という自信にもなります。また、それ自体がモチベーションにもつながりますよ。
受験票や使い慣れた筆記用具・ストップウォッチ・電卓は、できるだけ前日の早い時間までに用意しておきましょう。早い時間に確認しておかないと、いざ使おうと思ったときに電卓が動かなかったり、ボールペンのインクが切れてしまって使えない、ということがあるためです。そういうアクシデントがないようにしましょう。
あと、大事なのが試験会場までのルートの確認です。普段の通勤と異なるルートを使う、という方も多いと思うので、どういうルートで行くか考えておきましょう。また、交通系ICカードを使うときは、あらかじめチャージしておくことをおすすめします。
意外と盲点になりやすいのが、昼食の用意です。試験会場の近くにコンビニがある場合「あそこで買えばいいや」と思ってしまうかもしれません。しかし、受験生はみんな同じことを考えるので、当日の朝コンビニに行くと長蛇の列ができていて到着が試験開始時間ギリギリ、という可能性もあります。昼食は当日朝家を出る前に必ず準備しておくようにしましょう。
簿記論などを受験する場合は、移動時間が通勤ラッシュの時間帯に重なるので、遅延情報を常にチェックするようにしましょう。試験会場には試験開始30分~1時間前に到着できるとよいですね。緊張しやすい人は指が震えて開始直後は電卓がうまく使えないこともあるので、試験開始時間までに少し電卓をはじいて指ならしをしておくとよいですね。
また、トイレをいつどこで使うかを考えておくことも大事です。会場では受験者数に対してトイレの数が少ないこともあります。家を出る前に済ませるのが鉄則ですが、試験会場が遠い場合は、最寄駅に着いたら駅でトイレを済ませるのもよいでしょう。
直前期になればなるほど不安になって、他の教材に手を出したくなる方もいるかもしれません。しかし、スタディングの教材をきちんとこなすだけで十分合格できます。なので、スタディングの講座を信じて、しかれたレールにきちんと乗っかってまっすぐ進んでほしいですね。
あと、先ほどお話ししたとおり、本試験では解けないような問題が必ずいくつか出ます。すべてに手をつけるのは時間的に絶対無理なので、そういう問題はとりあえず後回しにして、制限時間をぜひ有効に使ってください。みなさんの合格を心からお祈りしています。
中村 博之 (なかむら ひろゆき) プロフィール
大手資格学校にて昭和58年5月より日商簿記講師を始める。日商3級、2級、1級の講師を歴任。 その後、平成に入り他の大手資格学校に移籍。簿記論と財務諸表論の講師を兼任。 |