条約に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものは,幾つあるか。
ア 国家間の合意であるとの条約の性質に照らし,内閣は,事前に国会の承認を経なければ,条約を締結することができない。
イ 既存の条約を執行するために必要な技術的・細目的な協定も国家間の合意であるから,これを締結する場合も,国会の承認を経なければならない。
ウ 条約の締結に必要な国会の承認については,衆議院に先議権はないが,議決に関する衆議院の優越が認められている。
エ 憲法と条約の関係についての憲法優位説を採ると,条約は裁判所の違憲審査の対象とならないという見解を採ることはできない。
オ 条約が裁判所の違憲審査の対象となるという見解を採った場合,条約について違憲判決がされたときは,条約の国内法としての効力のみならず国際法としての効力も失われる。
解答:4
ア ×
内閣の行う事務として「条約を締結すること」が規定されており,条約の締結に際しては,事前に,時宜によっては事後に,国会の承認を経ることが必要とされています。すなわち,国会の承認は,事前に限るものではありません。
ポイント 国会の承認は必須ですが,時期を限定するものではありません。
イ ×
締結に国会の承認を要する「条約」とは,名称のいかんにかかわらず,国家間に一定の権利義務関係を設定する文書による約束を指しますが,既存の条約を執行するために必要な技術的・細目的な協定は,ここにいう「条約」には含まれないとされています。
ポイント 「外交関係を処理すること」の一環として,内閣のみで行います。
ウ 〇
条約の締結に必要な国会の承認については,議決に関する衆議院の優越が認められているものの,衆議院に先議権はありません。
ポイント 衆議院に先議権があるのは「予算」の場合です。
エ ×
憲法と条約の関係についての憲法優位説を採ったとしても,憲法第81条の文言や条約の特殊性を理由として,条約が裁判所の違憲審査の対象とならないという見解を採ることも可能です。
ポイント 条約優位説を採れば,条約は裁判所の違憲審査の対象となりません。
オ ×
条約が裁判所の違憲審査の対象となるという見解を採った場合において,条約について違憲判決がされたときであっても,条約の国際法としての効力が直ちに失われるわけではありません。
ポイント 違憲判決をふまえた内閣の処理の問題となります。