不動産登記法-相続に関する登記
平成29年 午後の部 第19問

司法書士試験ピックアップ過去問解説

問題

甲不動産の所有権の登記名義人Aに相続が生じた場合に,甲不動産について申請する登記に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。

ア Aには配偶者B,子C及び胎児Dがおり,Aの相続人間でされた協議によりDが甲不動産を取得する旨を定めた場合には,Dの出生前であっても,相続を登記原因とするAからDへの所有権の移転の登記を申請することができる。

イ Aには子B,C及びDが,Bには子Eがおり,Aの相続開始後Bが死亡し,CとEとが,その各相続分をそれぞれDに譲渡した場合には,相続を登記原因とするAからDへの所有権の移転の登記を申請することができない。

ウ Aには子B及びC並びに妹Dがおり,Aの生前にDがAの財産の維持について特別の寄与をした場合において,B,C及びDによりDが甲不動産の所有権を取得する旨の協議が成立したときは,相続を登記原因とするAからDへの所有権の移転の登記を申請することができる。

エ Bは,Aの唯一の相続人として,配偶者及び妹としての相続人の資格を併有していたが,配偶者としては相続を放棄し,妹としては相続を放棄しなかった場合において,Bは,その旨を明らかにした添付情報を提供して,相続を登記原因とするAからBへの所有権の移転の登記を申請することができる。

オ Aには子B,C及びDがおり,Aの相続開始後Cが相続を放棄したが,Aが生前に甲不動産をEに売却していた場合において,売買を登記原因としてAからEへの所有権の移転の登記を申請するときは,B,C,D及びEが共同してしなければならない。


1 アウ    2 アエ    3 イエ    4 イオ    5 ウオ

解答・解説

解答:3

ア ×
胎児の出生前に,母が胎児を代理して遺産分割協議をすることはできないとされています。したがって,本肢のケースでは,相続を登記原因とするAからDへの所有権の移転の登記を申請することができません。

ポイント 胎児名義の単なる相続登記であれば可能です。


イ 
本肢のケースにおいて,EはAの直接の相続人ではありませんので,CとEとが,その各相続分をそれぞれDに譲渡した場合であっても,相続を登記原因とするAからDへの所有権の移転の登記を申請することはできないとされています。

ポイント いったんBDへの相続登記を行い,BからEへの相続登記を経た上で,E持分をDに移転する登記を行うことが必要です。


ウ 
×
本肢のケースにおいて,妹Dは,Aの相続人ではありません。したがって,相続を登記原因とするAからDへの所有権の移転の登記を申請することはできません。

ポイント 相続人間で寄与分の協議が成立したときは,相続登記が可能です。


エ 

本肢のケースにおいて,Bは,配偶者としては相続を放棄し,妹としては相続を放棄しなかった旨を明らかにした添付情報を提供して,相続を登記原因とするAからBへの所有権の移転の登記を申請することができるとされています。

ポイント 相続人としての資格を併有していたという特殊なケースです。


オ ×
相続放棄をした者は,はじめから相続人とならなかったものとみなされます。本肢におけるAの相続人Cは相続放棄をしていますので,はじめからAの相続人とならなかったものとみなされ,Aの登記申請義務を受け継ぐことはありません。

ポイント B,D及びEの共同申請により行います。


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