活躍する中小企業診断士インタビュー vol.01

セールストレーニング研究所
代表/紹介営業トレーナー 吉成篤さん


いつでも・どこでも手軽に勉強できる!

1980年、群馬県出身。セールストレーニング研究所の代表として、企業の営業力強化支援や売上アップ支援を行っている。また、都内の大学で兼任講師も担当。
<セールストレーニング研究所>http://www.sales-tr.jp
●資格
中小企業診断士
経営管理修士(MBA)
ターンアラウンドマネージャー
SAP認定コンサルタント(BW)
●参加・所属団体
埼玉県エキスパートサポート事業 専門家
一般社団法人 東京都中小企業診断士協会

中小企業診断士になったワケ


――さきごろ、『「失敗率0%」の営業術』を出版され、各方面から注目の吉成さんですが、まずは吉成さんの経歴からご紹介いただけますか。

吉成:大学卒業後、まずはSEになり4年半勤めました。ただ、システムは動いていれば何も言われないけど、止まると文句を言われるということで、若いなりにも、SEという仕事にやりがいを見いだせなかったんです。そこで、お客さんを"元気にする"仕事はないかなと思い、コンサルタントという仕事に注目しました。

――それで、中小企業診断士に興味を持ったんですね。

吉成:そうなんです。挑戦しようか迷っているときに、会社の先輩も勉強していることを知り、すぐに資格学校へ申し込みに行きました。2006年、26歳のときです。その時点では、将来独立については考えていなかったんですが、独立して仕事することの良し悪しを話してくれる先生がいまして。この方の話はずいぶん参考になりました。そこで、33歳までに独立しようと計画をしたんです。
 まずは、一度コンサル会社に勤めて、経験を積み基礎を学んでから独立しようと思い、たまたま見つけたコンサルタントの募集広告の年令制限が、26歳までだったのですぐ応募しました。それで、2007年9月に転職しました。

――相手を元気にする仕事(=コンサル)を目指したこと。独立している先生に出会ったこと。これらが転機になっていったんですね。そこで、勤めながらまた勉強を続けていたんですか?

吉成:勉強はしていたので、激務でしたね。就職した会社での仕事は、大きく3つあって、研修・セミナー講師、営業マン、コンサルタントでした。ひとりで全部やれるようになるというのが、会社の方針でした。

――いろいろやらせてもらえるって、独立を考えている人にはいい会社ですね。



吉成:でも、営業はやりたくなかったんですよ(笑)。実際、入社初年度は成績最下位、2社しか取れなかったんです。でも、翌年はトップセールスになれたんです。



――それはすごい! なにか転機が?



吉成:2年めには「将来独立をするんだ!」ともういちど腹をくくったので、もういちど頑張ってダメだったら独立もやめようと考えていました。それに、いかに楽して成果を上げるかを考えたんです。それが【営業先の紹介をもらうこと】だったんです。



――周囲でも紹介から営業を進めていった人はいたんですか?



吉成:いないですね。「もらうといいよ」とは聞いていたんですが。



――「紹介」は最初から戦略としてやっていたんですか?



吉成:たまたまでしたが、その後続いていきました。会社に来る引き合いは平等に回りますが、これは確実にこなして、紹介で得た案件を成績に上乗せしていったんです。



――そのとき資格のほうは?



吉成:まだとってないです。2009年8月に一次を通過して、その10月には大学院の中小企業診断士の養成課程に行くことを決めました。
 結構大変だったのですが、周囲のサポートもあり、サラリーマンをやりながら、養成課程に通うことにしました。

*中小企業診断士の試験は、養成課程を経ることで2次試験免除になる。だが、通常のサラリーマンは昼間通えないので、このコースを選択する人は少ない。


 そのままサラリーマンと並行して、2010年4月に法政大学大学院の養成課程(=MBA過程)へ。朝早く会社に行きメールチェックして、それから大学院に行くというような生活でした。そして、昼は講義がない時間は働き、夜も働くなどしていましたが、10月には退社して独立となり、いまに至るというところです。



――でも独立してすぐに仕事がある、というわけにはいかないですよね。



吉成:独立したばかりの段階では、もちろん顧客はゼロでした。2011年4月には、中小企業診断士登録をして、東京都中小企業診断士協会に所属しました。それからは、無報酬、ボランティア的な仕事もして、とにかく人脈を作ることを第一にしてきました。会合・懇親会とかは、気が進まなくても予定合わせて全部出席しましたね。意識して種まきをした時期でした。仕事になるかならないかというより、ともかくつながりを作るということを意識していました。そして、診断士協会に所属していることや公的機関での仕事は、信用力につながっていきましたね。



講師ではなく、あくまでもコンサルティングを目指して

――人脈作りも進んで、その後に新たなフェーズに向かうわけですね。


吉成:コンサル会社や異業種へ、自分を売り込みに行くようにしました。まずは、「講師 募集」でネット検索し2社コンサル会社を見つけ、模擬講義をやってOKをもらいました。A社は大手企業の若手向け研修、リーダーシップとかロジカルシンキングなどをやっているところです。B社は行政向けが多いですね。自治体が8割で、内容はタイムマネメント研修がほとんどです。B社では、最初の研修の顧客満足が好評だったらしく、その後も、自分の得意範囲の営業研修やその他の依頼も多く依頼をいただいています。



――なるほど、講師という仕事に適性があるんでしょうね!

吉成:いえ、講師業は嫌いなんです(笑)。セミナーをやるというより、コンサルティングをやるという意識なんです。わたしの研修では、いわゆる「いい話」はしません。それから、理論だけの講義はしない主義です。わたしの研修は、「学ぶ場」じゃないです。「実践する場」なんです、と。聞きに来ている彼らの気持ちが変化していけば、それが彼らの会社内に伝播していくわけで、これもひとつのコンサルティングだと思っています。
 そのため、講師業ではなく、「人前で話す仕事です。」と言い換えてます。私のような若造がしゃべるから、「どうせレベルも低いだろう。」と思われていて、聞く側の皆さんもハードルが低いんだと思うんですよね。一般にはまだ、講師というものは年配の方のが行うものだというイメージがあるようですから、若造が熱を持ってしゃべることにギャップが有るんでしょう。本音では、人前でしゃべるなんて、落ち着かないんですよ。 ただ、サラリーマン時代も年間70本程度の講義はやってきたので、その経験が自信になってきましたね。



――現在、大学講師もされているとお聞きしましたが、どういった思いがあって始めたんでしょうか?



吉成:はい。都内にある大学の経営学部で、リーダーシップを教えています。理由はとにかくやりたかったからということです。社会を前にしてやる気のある大学生たちが、昔の自分のように思えて、以前から支援をしてみたいという気持ちがありました。自分の頑張りを若い連中に伝えたかったんですね。私の話を腕組みしたまま聞いてるような生徒もいないですし、とても楽しい仕事です。



――それは、なかなか忙しいですね。ほかにも本業以外でやっている活動はありますか



吉成:私の師匠に、三井豊久さんという方がおりまして。この方が「強みを引き出す」コンサルティングということをしています。三井先生とは、講師という同業として出会ったんですが、いろいろとアドバイスをもらうなか、面白い上に非常に勉強になることが多くて、この前正式に弟子になりました。月1の弟子育成会にも行ってまして、来年からは私も加わって、もっと具体的に動いていこうと思っています。



テキトーコンサルティング事務所、代表 三井豊久さん
※解説→「頑張り過ぎない、無理をしない。適当適度」をモットーに、相手の丁度良い頃合を見極め、その人の強みを引き出すコンサルティング事務所 http://www.rumours.co.jp/


活動は広がり、ついに著書出版へ!

――ところで、先月(2013年3月)に著書『「失敗率0%」の営業術』を出版されていますよね。私の周りにも、本を出したいと思っている人は多いんですが、出版のきっかけは何ですか?

「失敗率0%」の営業術(ブックマン社)


アポイントさえ取ることができない。初めて訪問した会社の社長に、4時間立たされて罵倒される...。そんなダメダメ営業マンだった私が、どのように変化していたのか。それは、ある出来事がきっかけでした。「断られること」も立派な成果だ。テレアポ、飛び込み営業でつまずくな。成績が上がらず、行き詰っている人のための起死回生の書。

吉成:以前からいろいろ出版関係者にはあたっていたんですが、話が進んだものはなかったんです。ところがある日、コンサル会社の紹介で出版社の社長を紹介してもらったんです。この社長に、普段どんな研修してるのかと聞かれ、「営業のプロセスに特化した内容です。」と言ったら、じゃあ書いてみてということになりまして。
 大学院時代の修士論文をやったお陰で、書くことに抵抗はなかったので、1週間で7000から1万字書きました。そこで社長から、「文章うまいね。」と言われました。そして正式に、「出版に向けてやってみよう。」と言われました。そして、2か月ほどで書き終えたものを、担当者とブラッシュアップして昨年2012年の11月にはすべて固まりました。そのあとはタイトルや表紙のデザインの打ち合わせをしました。よくよく振り返ると、独立してから1年半で、本が出来ましたね。今日、ここに来る途中に、紀伊國屋書店で、自分の本を見つけて平積みの整理をしてきましたよ(笑)。

――結構話題になっているようですね!

吉成:非常にありがたいことに、出版社が日経新聞、朝日新聞に広告を出してました。その上、本を読んでくれた日刊ゲンダイの記者の方が電話をくれて、「ぜひ、取材をさせて下さい。」ということで、取り上げてもらいました。ウェブでも「霞ヶ関ナレッジスクエア」というところに出ています。この本を読んで、協業したいという企業の方が来られて。
うんちくではなく実践的な内容の本だから良かったと言われたのは、うれしかったです。

「霞ヶ関ネレッジスクエア」http://www.kk2.ne.jp/seminarevent/sem_spc46.html
※無料のWEB会員登録で、吉成さんが語る動画の視聴も可能。

――本の企画化にあたって、差別化などは考えました?


吉成:そうですね。本屋で調べてみると、「売上○%UP」とか、そんなタイトルの本は多くあったんですよ。そこで、成功率100%の逆の発想をしてみたんです。それが「失敗率0%」というタイトルに結びつきました。サブキャッチなどは、時間かけて練りました。
 それから、自分のプロフィールは練って考えました。通常はプロフィールって、良いことを前面に出して書く人が多いと思うんです。私は、本当に営業の大変さが痛いくらいに理解できます。だからこそ、読んで頂ける皆さんに、「私も昔苦労しているので、皆さんと同じです。がんばれば大丈夫です!」というメッセージが伝えたかったんですよね。そのため、わざと、苦労話や営業が嫌いなところなどを見えるようにしたんです。

【吉成さんの詳しいプロフィールはこちら→http://www.sales-tr.jp/about/career.html


――率直に「独立して食えるのか?」という疑問に対しては、いかがですか?


吉成:私のケースは、サラリーマン時代に比べて働く時間は半分で、収入は超えましたね。初年度は、個人事業収入だけだと結構厳しかったですが、ギリギリ生活できるくらいでした。翌年の収入は約400%アップし、そのまた翌年はそこから、さらに50%アップしました。今年は、すでにそれを越えているので、食べられるようにはなったというところです。気持ちにも余裕が生まれました。
 今は、週1で大学の講師をやらせて頂いているので、残りの平日4日間で仕事をするというスケジュールです。タイムマネジメントの研修をやってるのこともあるんですが、自分でも時間管理はうまいほうだと思っています。いかに、手帳に白いゾーンを作るかを考えて、打ち合わせを同じ日に固めるとかしています。ただ、基本的には土日、祝日は関係ないですね(笑)。


お持ちの機器でいつでも勉強できます。

これからの吉成さんと、独立を考える人へのメッセージ


――今後の吉成さんの活動はいかがですか? なにか具体的な目標などあれば教えてください。

吉成:執筆活動を増やしたいという気持ちはあります。それと、私と同様な個人事業主を支援していきたいですね。コンサル、実践塾というような形で、8人クラス隔週というようなものをイメージしています。紹介をもらいながら、ストレス負担をなく楽しく働ける士業、個人事業主、営業マンを5年の間で500人育てたい、というのが目標ですね!

――今、資格をとって頑張りたいと思っている読者にメッセージをもらえますか。吉成さんの経験から見えた「やるべきこと」とか、逆に「やるべきじゃないこと」なんかあれば、聞きたいです。

吉成:「根拠なき自信」でいいので、やりたいことを口に出すことが大事だと思っています。私自身、以前から「自分は本をだす。」ということは言い続けてきたんです。その結果、実現しました。独立して仕事するということも同じかと。「自分はこうなりたいんだ!」ということを宣言することですね。あとは、それを実践すること! 口に出してやらない人が多いですから。「この人は!」と思える人に出会ったら、話を聞いて真似して実践することもいいかもしれないです。私は、うまくいっている人の話は素直に聞いて、やってきました。
 あ、それと、人前で話すことは絶対やっておくべきだと思います! これは大事です! セミナーでも社内の勉強会でも、経験をしておくこと。コンサルティングスキルは習えばできるかもしれないけど、しゃべることは経験をしないとなかなか、慣れないし、うまくならないので。
 やらないほうがいいということは、特に思い浮かびません。うーん。考えているんだったら、「まず、やったほうがいいよ。」ということだと思いますね。。「いついつ、独立しますんで」と周囲に言いながら、人脈広めていくことは今からでもできますよね。