税引前当期純利益(または税引前当期純損失)に必要な調整項目を加減 する方法(間接法)により営業活動によるキャッシュ・フローを表示する 場合に、加算される項目として最も適切なものはどれか。
ア 損益計算書に収益として計上されている項目のうち、資金の増加を伴う項目
イ 損益計算書に収益として計上されている項目のうち、投資活動によるキャッシュ・フローの区分に含まれない項目
ウ 損益計算書に費用として計上されている項目のうち、資金の減少を伴わない項目
エ 損益計算書に費用として計上されている項目のうち、投資活動によるキャッシュ・フローの区分にも財務活動によるキャッシュ・フローの区分にも含まれない項目
解答:ウ
財務会計からキャッシュフロー計算書に関する問題です。
キャッシュフロー計算書は、1次試験だけでなく2次試験でも良く出題されています。
特に2次試験では、与えられた財務諸表から実際にキャッシュフロー計算書を作成する問題も出題されるため、数字を使って計算書を作成できるようにしておくことが重要です。
本問では、複雑な計算はなく、間接法によるキャッシュフロー計算書の基本的な理解が問われているため、確実に正解したい問題です。
間接法は、損益計算書の利益を使って、キャッシュフローを計算する方法です。間接法では、税引前当期純利益から出発し、キャッシュ(現金)の動きを表すように加減をしていきます。
つまり、上がった利益を、一旦「キャッシュ」が入ったものとして考えます。(税引前当期純利益の分だけキャッシュが増えたと仮定します。)
しかし「利益」と「キャッシュ」は等しくないため、差異の部分を加減して調整することで、利益からキャッシュに修正していくのです。
例えば、利益では、「減価償却費」という費用が既に引かれていますが、減価償却費は実際にキャッシュが支払われたものではありません。(キャッシュは固定資産などの購入時等に支払われますが、減価償却費はその後数年間に渡って費用化されたものです。)
このように減価償却費は、キャッシュの動きを伴わない非資金項目ですので、利益からキャッシュを表すように修正するためには、減価償却費の分だけ既にマイナスされている利益に、その分をプラスする必要があります。
例えば、簡単な例で、売上1000万、売上原価600万、減価償却費100万の場合、税引前利益は1000-600-100 = 300万となります。
この税引前利益300万は、減価償却費100万を引いた後の金額となっていますが、減価償却費100万は実際の資金の流出を伴わないため、キャッシュを表すためにはこれを税引前利益300万に加算し、400万とする必要があります。
実際には、このような非資金項目の調整だけでなく、様々な調整を経て利益からキャッシュに修正していきます。
これを踏まえて、選択肢を見ていきましょう。
アについては、間接法では、利益から出発するため「損益計算書に収益として計上されている項目のうち、資金の増加を伴う項目」を加算する必要はありません。よって、記述は不適切です。
イについては、「損益計算書に収益として計上されている項目のうち、投資活動によるキャッシュ・フローの区分に含まれない項目」の例として売上や受取利息などが考えられます。
売上については、加算する必要はありません(最初の出発点である利益に含まれています)ので、この時点で選択肢は不適切です。
受取利息については、少し複雑ですが、一旦符号を逆にして利益から控除(マイナス)し、小計以後で実際に受け取ったキャッシュの分をプラスするという処理を行います。
よって、どちらにしても選択肢は不適切(記述が不十分)です。
ウについては、先に説明した減価償却費の例が当てはまります。よって記述は正解です。
エについては、選択肢イと同じように、売上や受取利息などの例が当てはまるため、記述は不適切です。
今回は、キャッシュフロー計算書の基礎的な問題でした。
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