問題
次の資料に基づいて、加重平均資本コストを求めよ(単位:%)。
なお、自己資本のコストはCAPMにより算出する。
負債の税引前コスト 4% 実効税率 40%
安全利子率 2% 期待市場収益率 8%
β値 1.2 自己資本比率(時価に基づく) 40%
ア 3.04
イ 4.8
ウ 5.12
エ 6
解答・解説
解答:ウ
財務会計のファイナンス理論から、資本コストに関する問題です。
本問では、加重平均資本コストの計算を正確に行う必要があり、計算の複雑さや試験の制限時間を考えると、やや難易度が高い問題と言えます。
まず、加重平均資本コストについて簡単に復習をしておきましょう。
企業は、債権者(銀行や社債権者など)と株主から資金を調達をして経営しています。この資金調達にかかるコストが資本コストです。
債権者に対する資本コストは借入の金利を基に計算します。
株主に対する資本コストは、株主が会社に期待する収益率を基に計算します。株主が求める期待収益率は、CAPM(Capital Asset Pricing Model:資本資産評価モデル)というモデルで計算できます。
企業全体の資本コスト(加重平均資本コスト)は、債権者に対する資本コストと、株主に対する資本コストを、それぞれの割合で加重平均して合計したものとなります。
式で表すと、次のようになります。
加重平均資本コスト
= 負債 /(負債 + 資本) X(1−実効税率) X 負債利子率
+ 資本 /(負債 + 資本) X CAPM
式の前半は、債権者(負債)に対する資本コスト、式の後半は、株主に対する資本コストになり、これを合計したものが会社の資本コストに
なっています。
また、CAPMは次の式で求められます。
CAPM
= リスクフリーレート + β X 市場リスクプレミアム
※ 市場リスクプレミアム
= 市場ポートフォリオの期待収益率 − リスクフリーレート
上記の式は複雑に見えるかもしれませんが、理論の背景を知っていれば式の意味が理解できます。詳しくは、講座「2−8 資本市場と資本コスト」でもう一度確認してください。
では、ここで問題に戻って、加重平均資本コストを計算していきましょう。
まず、CAPMから計算します。
CAPMの計算では、まず「市場リスクプレミアム」を計算します。
市場リスクプレミアム
= 市場ポートフォリオの期待収益率 − リスクフリーレート
= 8% − 2%
= 6%
※市場ポートフォリオの期待収益率は、期待市場収益率と同じ意味です。
※リスクフリーレートは、安全利子率と同じ意味です。
次に、CAPMを計算します。
CAPM
= リスクフリーレート + β X 市場リスクプレミアム
= 2% + 1.2 X 6%
= 9.2%
つまり、株主がこの会社に求める期待収益率は、9.2%となります。
では、これを使って、加重平均資本コストを求めましょう。
加重平均資本コスト
= 負債 /(負債 + 資本) X(1−実効税率) X 負債利子率
+ 資本 /(負債 + 資本) X CAPM
でしたが、本問では、
自己資本比率(時価に基づく) 40%
が与えられているため、
資本 /(負債 + 資本) = 0.4 (40%)
負債 /(負債 + 資本) = 1−0.4 = 0.6(60%)
であることが分かります。
よって、
加重平均資本コスト
= 0.6 X (1−0.4)X 4%
+ 0.4 X 9.2%
= 1.44 + 3.68
= 5.12
となります。
よって、選択肢ウが正解です。
今日の問題は計算が多いですが、順番に計算していけば正解を導くことができます。理論の理解と併せて、計算問題を練習しておきましょう。
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