当期の損益計算書(要旨)は次のとおりである。変動費、固定費の構造は一定とすると、経常利益の目標10,500千円を達成する売上高として、最も適切なものを下記の解答群から選べ(単位:千円)
損益計算書(要旨)
(単位:千円)
売上高 100,000
売上原価 60,500
販売費及び一般管理費 26,000
営業利益 13,500
営業外収益 3,200
営業外費用 6,900
経常利益 9,800
(以下省略)
(注)1. 営業費用のうち固定費は21,500千円である。
2. 売上高が変化しても営業外収益、営業外費用は一定である。
[解答群]
ア 102,000
イ 105,000
ウ 110,000
エ 113,000
解答:ア
財務会計から目標売上高の計算に関する問題です。
目標売上高は、損益分岐点分析の手法を使って計算します。損益分岐点分析は1次・2次ともに出題されますので、基本的な問題は確実に正解できるように練習しておきたいテーマです。
本問は、損益分岐点分析の計算式を覚えていた方は、計算式に当てはめることで、計算さえ間違えなければ正解できる問題となっています。
まずは、損益分岐点分析と目標売上高の計算について復習をしておきましょう。
損益分岐点を求めるには、まず費用を売上に比例する費用=変動費と、売上に関係なく一定の費用=固定費に分けます。
そうすると、利益は、
利益 = 売上高 - 変動費 - 固定費
と表すことができます。
ここで、変動費は、変動費率に売上高を掛けたものと表せるため、
利益 = 売上高 - (変動費率 x 売上高) - 固定費
となります。この式を変形すると、
売上高 = (固定費 + 利益)/(1 - 変動費率)
となります。ちなみに(1 - 変動費率)は限界利益率とも呼ばれ、売上が1増えるたびに増加する利益(儲け)を表します。
損益分岐点売上高は、利益がちょうど0になる売上高ですので、上記の式に固定費と変動比率、および「利益=0」を代入することで求めることができます。
本問で問われている目標売上高は、上記の式に、「利益=目標利益」を代入することで求められるわけです。
求め方が確認できたので、次に実際に計算をしていきましょう。
必要なのは、目標利益、固定費、変動比率の3つの数字です。
目標利益は、本問の場合は営業利益を計算で求める必要があります。
注釈に「売上高が変化しても営業外収益、営業外費用は一定である」と書かれていますので、経常利益の目標から、営業利益の目標を計算で求めることができます。
営業利益目標 = 経常利益目標 -(営業外収益 - 営業外費用)
= 10,500 -(3,200 - 6,900)
= 14,200
固定費は注釈に書かれている通り21,500千円です。これは、売上高にかかわらず毎期一定の費用です。
次に当期の変動費を求めます。変動費は、営業費用から固定費を引くことで求められます。
変動費 = 売上原価 + 販管費 - 固定費
= 60,500 + 26,000 - 21,500
= 65,000
これより変動費率を求めます。
変動費率 = 変動費 / 売上高
= 65,000 / 100,000
= 0.65 (=65%)
必要な数字が揃ったので、先ほどの式に代入してみましょう。
目標売上高 = (固定費 + 目標利益)/(1 - 変動費率)
= (21,500 + 14,200)/(1 - 0.65)
= 102,000
これにより、選択肢アが正解となります。
このように、損益分岐点分析は計算には若干時間がかかりますが、内容自体は簡単なため、何度も練習をして慣れておくことで得点源にしておきましょう。
ちなみに、もっと計算が簡単な別の解法もあります。参考としてご紹介しておきます。
経常利益の目標10,500千円と、今期の経常利益9,800千円を比べると、目標値は、今期から700千円アップすれば良い事がわかります。
「利益を700千円アップするためには、売上をどれぐらいアップすれば良いか?」が分かれば、目標売上高が分かります。
ここで限界利益率は(1 - 0.65)より0.35ですので、売上が1アップすると利益が0.35アップします。
よって、利益700千円アップするには、(700/0.35=2,000千円)売上がアップする必要があります。
これより今期売上(100,000千円)に、2,000千円を足した102,000千円が目標売上高となります。
この方法は時間が無いときや、検算に使える方法なので、余裕のある方は覚えておくと良いでしょう。
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