財務会計 平成18年 第7問 - 税効果会計

ピックアップ過去問解説

問題

 税効果会計について述べた次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 一時差異等に係る税金の額は、将来の会計期間において回収または支払いが見込まれない税金の額を除き、【①繰延税金資産】または【②繰延税金負債】として計上しなければならない。繰延税金資産については、将来の回収の見込みについて毎期見直しを行わなければならない。

(設問1)
 文中の①を計上しなければならない事項として、最も適切なものはどれか。


[解答群]

ア 受取配当金の益金不算入額

イ 寄付金の損金不算入額

ウ 減価償却費の損金算入限度超過額

エ 交際費の損金不算入額



解答・解説

解答:ウ

税効果会計に関する問題です。

税効果会計の基本を理解していれば、正解は難しくない問題です。

税効果会計は、会計と税務のズレに対応するための手続きです。

法人税では、利益ではなく所得を基にして納税額を計算します。会計上の費用であっても、税務上の損金としては認められないものなどがあり、利益と所得にはズレが生じます。

例えば、交際費などを無制限に損金にできてしまうと、納税額が少なくなってしまい、公平な課税とは言えなくなります。よって、交際費は損金として算入できる額には制限があります。この場合は、会計と税務で生じたズレは永久に埋められないため「永久差異」となります。

また、減価償却費は企業の償却方法によって費用が変わってしまうため毎期の損金に算入できる額には制限があります。当期に損金に算入されなかったものは、次期以降に繰し越しされます。この場合は、長期的に見れば会計と税務で生じたズレは埋められますので「一時差異」となります。

一時差異の場合には、財務諸表上で、繰越された税金の額を表示します。 これが税効果会計です。

ここまでを念頭に入れた上で、問題を見ていきましょう。

設問1は、繰延税金資産を計上しなければならない事項を選ぶ問題です。

繰延税金資産は、将来の課税額(課税所得)を減らす場合に、計上されます。これは「将来減算一時差異」でした。

上で紹介した、減価償却費の例が、これにあてはまります。 これにより、選択肢ウが正解となります。

他の選択肢は、すべて永久差異になりますので、不適切となります。

ちなみに、アは、配当を支払った企業側では既に課税済みの所得から配当されているため、配当を受け取った企業側で2重に課税するのを防ぐという意味があります。よって、繰越される項目ではなく、永久差異となります。

イは、寄付金の支払いは、無制限に損金にできないことになっています。 これも永久差異です。

エは、上で紹介したように、交際費は永久差異になります。 ちなみに、寄付金や交際費と同様に、永久差異を生じる損金不算入の項目には、過大な役員報酬・賞与・退職金や、罰課金(罰金のこと)などがあります。

これらを無制限に経費として認めてしまうと、公平な納税とは言えなくなるのは、理解できると思います。

今回は、税金と会計の違いを理解していれば、正解できる問題でした。


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