収益認識基準 - 中小企業診断士 財務会計 令和3年 第6問

ピックアップ過去問解説

問題

 収益に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 検収基準は、契約の解消や返品リスクがない場合に採用される。

イ 出荷基準よりも収益認識のタイミングが早いのは、引渡基準である。

ウ 長期請負工事については、事進行基準を適用しなければならない。

エ 販売基準は実現主義に基づいている。


解答・解説

解答:エ

 本問では収益認識基準について問われています。やや難易度が高い問題ですが、ある程度まで選択肢を絞り込む事は可能です。

収益の認識基準には、「現金主義」、「発生主義」、「実現主義」の3つの考え方があります。

現金主義:とは、現金収入があったときに、収益を計上する考え方です。通常は企業間の取引では「現金」ではなく、企業間信用に基づいて取引されているため、「現金主義」では期間損益を適切に表現できません。

発生主義:とは、現金の受取りとは関係なく、収益を「発生を意味する経済的事実」に基づいて計上する考え方です。発生主義は、事実上収益の発生が確定した時点で計上する考え方です。

実現主義:とは、「発生主義」をより厳しくしたものと言えます。「実現主義」では、商品やサービスを販売し、債権の発生が確定した時点ではなく、債権の回収が確定した時点で計上する考え方です。つまり、企業が(企業外部に)商品・サービスを提供し、その対価として現金または売掛金・受取手形などの現金同等物を受け取った時点で計上する考え方となります。

現行の制度会計では、費用については原則として発生主義を、収益については原則として実現主義を採っていることに注意しましょう。

また、どの段階で収益認識(売上計上)をすべきについては、引渡しがあった時点とされています。この「引渡しがあった時点」の解釈には、受注から入金までの一連のプロセスの中で、出荷、納品、検収のいずれかの時点とする解釈(収益認識基準)が基本的なパターンです。

出荷基準とは、商品を出荷した時点で収益として認識する考え方です。

引渡基準とは、商品が取引先に到着した時点で収益として認識する考え方です。

検収基準とは、取引先が納品された商品の内容を確認し、問題ないことを書面(検収書)などで通知した時点で収益として認識する考え方です。

選択肢アですが、検収基準は、取引先が納品された商品の内容を確認し、問題ないことを書面(検収書)などで通知した時点で収益として認識する考え方です。よって、不適切です。

選択肢イですが、出荷基準は、商品を出荷した時点で収益として認識する考え方です。引渡基準は、商品が取引先に到着した時点で収益として認識する考え方です。よって、順番は、出荷基準→引渡基準の順となるため、引渡基準のほうが収益認識のタイミングが遅くなります。よって、不適切です。

選択肢ウですが、長期請負工事は、工事の進行途上においてその進捗部分について成果の確実性が認められる場合には、工事進行基準を適用し、この要件を満たさない場合には工事完成基準を適用するとされています。よって、不適切です。

選択肢エですが、現行の制度会計では、費用については原則として発生主義を、収益(=販売基準)については原則として実現主義を採っています。よって、適切です。

よって、正解はエになります。


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