モジリアーニとミラーの理論(MM理論)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ただし、投資家は資本市場において裁定取引を円滑に行うことができ、負債にはリスクがなく、法人税は存在しないと仮定する。
ア PER(株価収益率)は、無借金の方が負債で資金調達するよりも小さくなる。
イ 企業の最適資本構成は存在し、それによって企業価値も左右される。
ウ 企業の市場価値は、当該企業の期待収益率でキャッシュフローを資本化することによって得られ、資本構成に影響を与える。
エ 投資のための切捨率は、資金調達方法にかかわりなく、一意に決定される。
解答:エ
本問では、MM理論について問われています。頻出論点であり、基本的な知識で解答できるため、正答したい問題です。
「MM理論」とは、法人税がない完全資本市場を仮定して最適資本構成を研究したモデルのことです。
MM理論の定義は以下のようになります。
MM理論 |
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完全資本市場においては、企業の価値は、借入(負債)で資金調達するか株式(自己資本)で資金調達するかといった資本の調達方法によらず、企業が将来生み出すキャッシュ(資産)によって決まります。
そのため、負債を利用することによる資本構成の変化は、加重平均資本コスト(WACC)や企業価値に影響を与えません。
なお、法人税が存在する現実においては、企業価値は資本構成に依存することになり、最適資本構成が存在し、加重平均コストの最小値が存在することに注意しましょう。
選択肢アのPER(Price Earnings Ratio)とは、株価収益率のことです。株価収益率は、株価が1株当たり当期純利益の何倍になるかを示す指標で、次のように計算されます。
PER = 株式時価総額 ÷ 当期純利益
問題文には、負債にリスクがなく、法人税が存在しない完全資本市場におけるPERについて問いています。
上記の定義により、完全資本市場では、企業価値(=株式時価総額)は、その資本構成に依存しません。
そのため無借金であっても、企業価値(=株式時価総額)は一定です。
また、当期純利益については、負債にはリスクがないため、金利が発生しません。
借金があっても金利が発生しないので、当期純利益は一定です。
したがってPERは、無借金であっても、借入があっても一定です。
よって、この選択肢は不適切です。
選択肢イですが、上記の定義により、完全資本市場では、最適資本構成は存在しません。
よって、もの選択肢は不適切です。
選択肢ウの、問題文の「企業の市場価値は、当該企業の期待収益率でキャッシュフローを資本化することによって得られ」は、文章が長く難解な内容です。
ここで言っていることは、企業の市場価値(=企業価値)は、将来得られるキャッシュ・フローの現在価値の合計となるということです。
よって、この部分は適切です。
しかし、その後に続く「資本構成に影響を与える。」は、完全資本市場では企業価値はその資本構成に依存しないので不適切となります。
よって、この選択肢は不適切です。
選択肢エですが、「切捨率」とは、企業が新規投資を行うとき,その投資があげなければならない最低限の利益率のことです。
投資を行うためには資本を調達しなければならないが、株主、債権者等の投資家は資本提供の対価として利益の分配を要求することから、それを満足するに十分な投資利益率という意味の資本コストが発生します。
また、MM理論の中に、「資本コストは資本構成には依存しない」があります。
これは、各企業の投資政策は、当該企業横断的に同一の資本コストによってのみ決まり、企業の資本構成の影響を受けないことを意味しています。
よって、この選択肢が適切です。
正解はエになります。
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