最寄品を主に取り扱う小売店舗における在庫管理に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 1回当たりの発注量が一定の場合、サイクル在庫は一定になる。
イ 欠品を防止するために設定する安全在庫量は、需要量の標準偏差が2倍になると半分になる。
ウ 定期発注方式を採用した場合、販売量を一定とすると、1 回当たりの発注量は発注から納品までの調達期間が長くなるほど少なくなる。
エ 定量発注方式を採用した場合、発注量の決定には発注間隔があらかじめ決定されている必要がある。
オ 発注点と補充点を設定して発注する方式を採用した場合、1回当たりの発注量は販売量の増減にかかわらず一定になる。
解答:ア
最寄品の在庫管理に関する出題です。在庫量を適正に維持するための発注方式について基本的な知識が問われています。様々な発注方式の細かな点まで理解している必要があり、やや難易度の高い問題です。
では、選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは適切な記述です。サイクル在庫とは、発注から次の発注までの期間に売れる量の半分を指します。言い換えると、1回の発注量の半分の量です。例えば、1週間に1回発注するとします。1週間で売れる量が20個(発注量も20個)の場合、サイクル在庫は10個です。よって、1回あたりの発注量が一定であればサイクル在庫も一定となります。
選択肢イは不適切な記述です。安全在庫は、急に売れたり、まとめ買いがあったり、あるいはメーカー側の欠品で入荷しなくなった場合に備えて、店舗側である程度多めに持っておく在庫のことです。安全在庫量は多過ぎると過剰在庫になり、少な過ぎると欠品を起こしますので、適正量を設定する必要があります。正確に設定する場合は次の式で求めます。
上式より、需要量の標準偏差が2倍になれば、安全在庫も2倍になります。
但し、本問は計算式を覚えていなくても解答することができます。選択肢には「需要量の標準偏差が2倍になる」と難しく書いてありますが、要するに「バラつきが2倍になる」ということです。売れ行きの振れ幅が2倍になるわけですから、安全在庫の量は半分にはならないことがイメージできると思います。
選択肢ウは不適切な記述です。定期発注方式は、一定期間ごとにその都度、発注量を決めて発注する方法です。販売量が一定の場合、発注から納品までの調達期間が長くなると、1 回当たりの発注量は多くなります。例えば、毎日10個ずつ売れていたとします。発注してから商品が届くまでの期間が長くなればなるほど、その日数分の在庫を持っておく必要がありますので、1回の発注量も必然的に多くなります。
選択肢エは不適切な記述です。定量発注方式は、在庫量が一定の水準になったときに一定量を発注する方法です。発注量は経済的発注量で決定し、発注間隔は需要の変動に応じて基本的に毎回異なります。発注間隔をあらかじめ決めておく必要があるのは定期発注方式です。
選択肢オは不適切な記述です。発注点と補充点を決めて発注する方法を「発注点・補充点方式」といいます。在庫量が発注点を下回ったら、補充点まで発注します。このとき、発注量は現時点の在庫量を引いた数となります。例えば、補充点を10個、発注点を4個に設定したとします。在庫が4個を下回ったら、在庫が10個になるように発注しましょうという意味ですので、発注量は10個-4個=6個となります。ところが、残りの在庫がいつも4個とは限りません。一度にたくさん売れて1個になっているかもしれません。この場合は9個発注することになります。よって、発注点・補充点方式の場合、1回当たりの発注量は一定ではなく、販売量の増減によって変動します。
在庫管理は頻出テーマです。それぞれ発注方式の特徴は生産管理でも問われますので、しっかりと理解しておきましょう。
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