商品の売上と利益の管理に関する記述として、最も適切なものはどれか。ただし、仕入れた商品をすべて売り切ることを前提に答えよ。
ア 一定の利益幅を仕入原価に上乗せして販売価格を設定する方法をマークアップ法という。
イ 最初の販売価格で売れ残った商品を当初の値入率より低い値引き率で特売すると粗利益額がマイナスになることがある。
ウ 仕入れた商品を販売したときの粗利益額は、仕入時に設定した値入額を上回ることが多い。
エ 値入率が異なる複数商品の販売計画を立てる場合、仕入数量が決まらなくても全体の値入率を計算することができる。
解答:ア
利益管理に関する出題です。値入額と粗利益の違いを踏まえた応用知識が問われていますが、難易度は高くありませんので確実に正解したい問題です。
まず、値入と粗利益について確認しておきましょう。
値入とは、小売業において商品の販売価格を決めることです。値入額は、商品の仕入原価に上乗せした利益を指します。仕入時点で予定している販売価格から仕入時点の原価を差し引いた値が値入額です。
値入額=初回売価-仕入原価
値入率とは値入額の割合です。売価に対する割合を売価値入率、原価に対する割合を原価値入率といいます。
値入率=値入額÷売価(又は仕入原価)
これに対して粗利益額とは、商品の実際の販売価格から仕入原価を差し引いた利益です。値入額との違いは、仕入時点に予定している利益が値入額であるのに対し、粗利益額は商品を販売した結果として得られた利益になります。つまり、粗利益額は商品の値引きなどが反映されます。
では、選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは適切な記述です。マークアップ法は、商品の仕入原価に一定の利益額または利益率を加えて販売価格を設定する方法です。
選択肢イは不適切な記述です。値入率より低い値引き率で販売するのであれば、粗利益額がマイナスになることはありません。例えば、当初の値入率が20%で、特売時にそれより低い15%の値引きをしたとします。この場合の粗利益率は20%-15%=5%です。当初の値入率>値引き率であれば、粗利益額は常にプラスです。マイナスになるのは、値入率よりも高い値引き率を設定した場合です。
選択肢ウは不適切な記述です。商品にもよりますが、一般的に粗利益額が値入額を上回るケースは殆どありません。むしろ、下回ることが多くなります。これは商品の売れ行きが思わしくなかったり賞味期限が迫ったりして、当初の販売価格では売り切ることが難しくなった場合に、値下げをして売り切るケースがあるためです。本問では「仕入れた商品をすべて売り切ることを前提」としていますので、粗利益額は値入額を下回る方が多くなると考えられます。
選択肢エは不適切な記述です。値入率が異なる複数商品は、それぞれの仕入数量が決まらないと全体の値入率を求めることができません。
全体の値入率=(各商品の値入率×各商品の仕入数量)の合計÷全商品の仕入数量
例えば、商品A,B,Cの値入率がそれぞれ20%、30%、40%だったとします。仕入数量はそれぞれ50個、100個、250個であれば、全体の値入率は次の通りです。
全体の値入率=(20%×50個)+(30%×100個)+(40%×250個)÷400個
=10+30+100=140÷400=35%
このように、値入率が異なる複数商品の場合、全体の値入率を求めるためには、各商品の仕入数量が決まっていないと計算ができません。
値入は頻出テーマです。売価値入率や原価値入率を計算させる問題も出題されます。粗利益額と値入額の違いをしっかり理解し、計算問題にも対応できるようにしておきましょう。
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