職務設計に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 職務設計においては、高生産性と同時に作業者のモラールの向上が実現されるように、作業者に分担させる仕事の内容を計画しなければならない。
イ 職務設計においては、作業者の心理的要因を十分考慮し、「仕事を人に合わせる」という考え方ではなく「仕事に人を合わせる」というアプローチが必要とされる。
ウ 多工程持ちは変種変量生産への対応において効果的な方策であるが、作業者には負担感が大きく、モラールを低下させる1つの要因となる。
エ フォードシステムを導入することにより、流れ作業と分業化によって作業の効率化が進められると同時に、職務拡大や職務充実が図られる。
解答:ア
職務設計に関する出題です。職務設計の基本的な考え方が問われており、難易度は高くありません。
職務設計とは、「作業者の欲求を満足させ、勤労意欲を高揚させるために、作業者に負担させる仕事の内容を計画する行為」(JIS Z 8141-5112)と定義されています。つまり、人間性を尊重して、人を中心に仕事を計画することをいいます。かつては、経済的・技術的な視点から、一人の人間が最も能率的に遂行できる仕事の組み合わせが考えられてきました。今日では、人間の社会的・心理的な側面を考慮して担当業務を計画していくことが一般的となっています。
では、選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは適切な記述です。職務設計は、生産性の向上と同時に作業者の勤労意欲(モラール)を高めるように仕事の内容を計画する必要があります。
選択肢イは不適切な記述です。職務設計は、作業者のライフステージや身体的特性などの社会的・心理的要因を十分に考慮し、「仕事に人を合わせる」のではなく「仕事を人に合わせる」というアプローチが求められます。
選択肢ウは不適切な記述です。多工程持ち(多工程持作業)とは、作業工程の流れの順に作業者が複数の工程を受け持って作業することを指します。一人の作業者の仕事の幅を広げるため、品種や生産量の変動に柔軟に対応することが可能となります。多工程持ちは単調な仕事の繰り返しではなく、人間性を尊重した職務設計を実現しており、モラールの向上につながると考えられます。
選択肢エは不適切な記述です。自動車の量産するフォードシステムは、流れ作業と分業化で作業の効率化を図りましたが、その反面、単調作業や看視作業(変化や異常を注意深く見守る作業)を生み出し、作業者の労働意欲の喪失を招きました。フォードシステムでは、担当する職務の幅を広げる「職務拡大」や、職務の内容を質的に高める「職務充実」は図られていません。
職務設計の出題頻度は近年あまり高くありませんが、過去には何度か出題されています。基本的な考え方は理解しておきましょう。
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