次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
下表は、A国とB国が、農業製品または工業製品を1単位生産するのに必要な生産要素量を示している。ここで、簡単化のために、A国とB国の2国のみを想定し、それぞれの国は、農業製品ならびに工業製品のみを生産すると考える。さらに、生産要素として労働力のみを考え、両国間で労働力の移動はないものとする。
農業製品 工業製品
A国 5 6
B国 3 1
(設問1)
A国とB国の比較優位、絶対優位に関する説明として、最も適切なものはどれか。
ア A国は、工業製品に比較優位を持っているが、絶対優位は持っていない。
イ A国は、農業製品に比較優位を持っているが、どちらの製品に関しても絶対優位は持っていない。
ウ B国は、工業製品に比較優位を持っているが、どちらの製品に関しても絶対優位は持っていない。
エ B国は、農業製品に比較優位を持っており、かつ、どちらの製品に関しても絶対優位を持っている。
解答:イ
ミクロ経済学から、比較優位論に関する出題です。
本問では、比較優位論の基本的な理解が問われており、確実に正解したい問題です。
比較優位論は、約200年前に、イギリスの経済学者のリカードによって提唱された、自由貿易に関する理論です。
比較優位論では、2国間の貿易では、それぞれ得意とする財の生産に特化して貿易をすることで、両国共に利益が得られるという事が示されました。
比較優位論では、2国間の関係において、絶対優位と比較優位という言葉が出てきます。
絶対優位は、2国間である財の生産性を比較した結果、生産性が勝っていることを表します。
本問のデータで見ていきましょう。
農業製品については、1単位生産するのに必要な生産要素量は、A国では5、B国では3となっています。そのため、生産性を比べると、B国の方が高い事が分かります。(投入する生産要素が少ない方が生産性は高くなります)
そのため、農業製品については、B国はA国に絶対優位を持っています。
工業製品についても同じように比較すると、こちらもB国の方が生産性が高い事が分かります。
そのため、工業製品についても、B国はA国に絶対優位を持っています。
今度は比較優位を見ていきます。
比較優位は、それぞれの国を比較して、どちらの財の生産が得意かを表します。
比較優位を考える上では、どちらかの財を1に揃えると分かりやすくなります。
農業製品を1に揃えた場合、A国では工業製品は6/5(=1.2)、B国では工業製品は1/3(=0.333..)となります。
農業製品 工業製品
A国 1 1.2
B国 1 0.33...
これを見ると、2国を比較して、A国は工業製品よりも農業製品の生産が得意、B国は農業製品よりも工業製品の方が生産が得意という事が分かります。(上記の工業製品の数値1.2と0.33を比較します)
そのため、A国は農業製品に比較優位を持っており、B国は工業製品に比較優位を持っています。
(比較優位の考え方では、どのような国でも必ず、比較優位の財とそうでない財が存在します。全ての財が比較優位となる国は存在しません。)
ここまで分かれば、選択肢から正解を選択できます。
正解は、選択肢イの
A国は、農業製品に比較優位を持っているが、どちらの製品に関しても絶対優位は持っていない。
となります。
補足ですが、比較優位論は、比較優位の財に特化して生産し、そうでない財を輸入するという国際分業と自由貿易によって、両国共に利益を得ることができるという理論です。
しかし、関税などの障壁が高いと、自由貿易による利益が少なくなります。
最近では、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)に関するニュースを良く見かけますが、これらは関税を含む貿易上の障壁を取り除き、地域や2国間で自由貿易を促進することを目的としています。
比較優位論を知っていると、こういった国際動向の背景をより良く理解することができます。
また、時事的なテーマとしても出題の可能性がありますので、しっかりと理解しておくようにしましょう。
今回は、比較優位論の基本を押さえいれば正解できる問題でした。
中小企業診断士 1次2次合格コース
|
すべてのコースを見る |