自然失業率仮説に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a インフレと失業の間には、短期的にも長期的にも、トレード・オフの関係が成立する。
b 自然失業率とは、非自発的失業率と自発的失業率の合計である。
c 循環的失業の拡大は、実際のインフレ率を抑制する。
d 政府による総需要拡大策は、長期的にはインフレを加速させる。
〔解答群〕
ア aとb
イ aとd
ウ bとc
エ cとd
解答:エ
本問は自然失業率仮説に関する問題です。基本的知識を問う問題ですので、難易度は高くありません。
では、フィリップス曲線について確認しましょう。
フィリップス曲線は、賃金上昇率、物価、と失業率は負の相関関係を示すとされています。横軸に失業率をとり、縦軸に物価水準をとると、右下がりの曲線となります。これは、インフレが起こると失業率が低下し、逆に失業率が高いときは物価が下がることを意味します。つまり、物価上昇率と失業率は負の相関関係、つまりトレード・オフの関係となっています。
自然失業率とは、完全雇用が達成されてもなお存在する失業率のことで、労働市場が均衡しているときの失業率のことをいいます。労働市場が均衡し完全雇用が達成されているときには、非自発的失業は存在しませんが、自発的失業(自己の意思で失業している、あるいは適職が見つかるまで失業している状態)や摩擦的失業(労働者が転職、労働力化する際の移動にともなう失業)は存在します。
労働者と企業の間で情報の非対称性が存在するかしないかによって、次のように短期と長期が定義されています。短期とは、情報の非対称性が存在し、企業は現実の正しい物価上昇率を知ることができるのに対し、労働者は現実の正しい物価上昇率を知ることができない状況です。労働者は期待物価上昇率に基づいて行動することになり、この期待物価上昇率は必ずしも現実の物価上昇率に一致しません。長期とは、情報の非対称性が存在せず、労働者も企業も現実の正しい物価上昇率を知ることができる状況です。労働者は現実の物価上昇率に基づいて行動することになります。
自然失業率仮説とは、期待物価上昇率と現実の物価上昇率が一致をする長期においては、現実の失業は完全雇用に対応する自然失業率に等しくなるという考えかたです。この仮説が成り立つとき、長期フィリプス曲線は、自然失業率の水準で横軸に対して垂直となり、長期的には、インフレと失業のトレード・オフは存在しないことになります。
では、各記述を見ていきましょう。
aの記述ですが、インフレと失業の間には、短期的にはトレード・オフが成立しますが、長期的には、フィリップス曲線が垂直となるため、トレード・オフは成立しません。従って、不適切な記述です。
bの記述ですが、自然失業率は、完全雇用が達成されてもなお存在する失業率のことです。労働市場が均衡し完全雇用が達成されているときには、非自発的失業は存在しません。従って、不適切な記述で。
cの記述ですが、循環的失業とは景気変動によって生じる失業です。 上図の通り、失業率が増加すると、物価は低下し、インフレ率を抑制します。従って、適切な記述です。
dの記述ですが、総需要拡大策は、需要増加させることにより供給とのバランスに変化をもたらすものです。総需要拡大政策は長期的にはインフレを加速することになりますので、適切な記述です。
従って、cとdが適切ですので、選択肢エが正解になります。
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