中小企業診断士 企業経営理論
平成30年 第4問 - 事業再編と買収

ピックアップ過去問解説

問題

企業の事業再編と買収の戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。


ア 企業の一部門を買収するタイプの買収は、通常、狭義のレバレッジド・バイアウトと呼ばれ、もともとは経営資源の拡大を意図したが、マネジメント・バイアウトやエンプロイー・バイアウトとは異なる範(はん)疇(ちゅう)の手法である。

イ 事業規模の縮小は、通常、売却、企業の一部門の分離独立であるスピンオフ、 企業の中核事業に関連しない部門の廃止などの手法を指し、事業ポートフォリオを変えて短期的には負債の削減につながる。

ウ 事業範囲の縮小は、企業買収によって期待した価値を実現できない際の買収見直しに用いられ、通常、従業員数や事業部門数の削減を伴い、事業規模の縮小と同様に事業ポートフォリオを変えることになる。

エ 自社資産を担保に調達した資金によって、オーナーではない経営者が自社を買収するタイプの買収は広義のレバレッジド・バイアウトの一形態であり、通常、買収後には経営の自由裁量の確保や敵対的買収に対する防衛などのために株式を非公開とする。

オ プライベート・エクイテイ投資会社が、企業の資産の大部分を買い取って当該企業を非上場化するレバレッジド・バイアウトでは、通常、当該企業の業務を維持し、資産の売却は長期的な計画の下で行う。



解答・解説

解答:エ

 本問では、買収戦略の用語の理解について問われています。買収戦略の用語を確実に記憶していれば比較的難易度が低い問題です。以下の知識を確認しておきましょう。

LBOは、レバレッジド・バイアウトの略です。企業買収では、大量の買収資金が必要ですが、LBOはこの資金を全て用意しなくても買収できる手法です。LBOでは、買収される企業の資産や将来性を担保に、資金を金融機関から借り入れて、その資金で買収します。これにより、限られた資金でも大型の買収ができます。ただし、買収後に企業の業績が悪化した場合は、借り入れた資金を返済できなくなるリスクがあります。


MBOはマネジメント・バイアウトの略で、現在の経営陣が、自社や事業を買収することを表します。これにより、経営陣が自社の経営権をもつオーナー経営者になります。利用されるケースとしては、企業が業績悪化などの要因で事業再編をする際に、MBOを行い、上場を廃止します。これにより、経営陣がオーナーとなって機動的な経営を行い、思い切った事業再編を行うというような状況で利用されることが多くなっています。

MBIは、マネジメント・バイインの略です。MBIは企業の外部の経営陣による買収となります。

EBOは、エンプロイー・バイアウトの略です。MBOがオーナー経営者以外の経営者による企業買収ですが、EBOは、部門長や部長といった、役員ではない従業員による企業の買収です。

ではこれらの知識を踏まえて選択肢を見ていきましょう。

選択肢アは不適切な記述です。レバレッジド・バイアウト(LBO)は買収される企業の資産や将来性を担保に資金を調達して買収する戦略です。企業の一部門に限らず全体を買収することもあり一部門としている点が誤った記述です。企業の一部門の買収はLBOに限らず自社にはない経営資源の獲得を目的とすることもあり、経営資源の拡大を意図したものである点は正しい記述です。しかし、MBOやEBOはLBOを利用して行われることもあり、異なる範疇の手法とはいえません。

選択肢イは不適切な記述です。「事業規模の縮小」は販売量や従業員の削減等の経営資源の削減をいいます。スピンオフや非中核事業からの撤退は「事業範囲の縮小」に該当します。

選択肢ウは不適切な記述です。選択肢イの説明通り従業員数や事業部門数の削減は、「事業範囲の縮小」ではなく、「事業規模の縮小」です。

選択肢エは適切な記述です。オーナーではない経営者による買収はMBOであり、通常、買収後に経営の自由裁量の確保や敵対的買収に対する防衛のために株式を非公開にします。MBOの必要資金を買収対象である自社資産を担保に調達すればLBOに該当します。従って、広義のLBOの一形態ということができます。

選択肢オは不適切な記述です。プライベート・エクイティ投資会社(PE)は、長期的な計画のもと、非上場企業を買収し、収益性を高めて上場させ、上場後に売却してリターンを得ます。買収により非上場化することが目的ではありません。

買収の戦略は、誰による買収か、資金調達は買収対象の資産を担保にするかで判断しますので、複数の戦略が重複するケースの多い点に注意しましょう。



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