ア 近年では様々なソーシャルメディアが普及しており、とくにSNSを活用した顧客関係性の構築に基づくマーケティングのあり方は、ソーシャル・マーケティングと呼ばれている。
イ ソサイエタル・マーケティング・コンセプト(societal marketing concept)では、標的市場のニーズや欲求、利益を正しく判断し、消費者と社会の幸福を維持・向上させる方法をもって、顧客の要望に沿った満足を他社よりも効果的かつ効率的に提供することが営利企業の役割であるとしている。
ウ マーケティングは営利企業の市場創造においてだけでなく、美術館や病院、NPOなどの非営利組織にも適用されているが、非営利組織のマーケティングにおいてはマーケティング・ミックスのうちの価格要素の持つ相対的重要性は低い。
エ マーケティング・ミックスの4つのPは買い手に影響を与えるために利用できるマーケティング・ツールを売り手側から見たものであるが、これらを買い手側から見ると4つのCとしてとらえることができる。4PsのPlaceに対応するものは、Customer cost、つまり顧客コストである。
オ マーケティング・ミックスは企業が設定した標的市場においてそのマーケティング目標を実現するための一貫したツールとしてとらえられるが、そのうちの販売促進の修正は、他のマーケティング・ミックス要素の修正と比べて長期間を要するものである。
解答:イ
選択肢の記述を落ち着いて検討すれば、正解できる問題です。
選択肢アは、SNSを利用した顧客関係性の構築に基づくマーケティングのあり方は「ソーシャル・マーケティング」ではなく「ソーシャル・ネットワーク・マーケティング」ですので記述は誤りです。
選択肢イは、ソサイエタル・マーケティング・コンセプトに関する記述です。
社会志向的マーケティングと訳されるソサイエタル・マーケティングは、伝統的なマーケティングを社会的価値や社会的役割という新しい観点から捉えなおしたものです。「消費者と社会の維持向上させる方法」をとるという記述は適切です。
よって、これが正解になります。
選択肢ウは、非営利組織のマーケティングに関する記述です。非営利組織のマーケティングの特徴は、消費者ニーズの把握が難しく、場合によっては無関心(ゼロ)や嫌悪(マイナス)であることもあります。長期的視点でコンセプト提案を粘り強く行う、適切なプロモーションによって細分化したターゲットに働きかけるといった必要が生じます。しかし非営利組織だからといって価格要素の持つ相対的重要性は低いとは言えません。むしろ、一定の運営コストは徴求せざるを得ないこと、価格が高いと思われたら利用されない、反発を持たれるなどといったことが生じますので、価格は重要な要素になります。従って、記述は不適切です。
選択肢エは、マーケティング・ミックスの4Pと4Cの対応関係についての記述です。マーケティング・ミックスの4Pは、製品戦略(Product)、価格戦略(Price)、チャネル戦略(Place)、プロモーション戦略(Promotion)です。この4Pは企業から見た、マーケティング・ミックスです。消費者から見たマーケティング・ミックスは4Cといわれます。4Cは、4Pと対になる考え方で「Product(製品) 対 Customer Value(顧客にとっての価値)」「Price(価格) 対 Cost to the Customer(顧客の負担)」「Promotion(販売促進) 対 Communication(コミュニケーション)」「Place(販売ルート)対 Convenience(⼊⼿の容易性)となります。従って、Placeに対応するものはCustomer CostではなくConvenience、つまり入手容易性」となりますので記述は不適切です。
選択肢オは、マーケティング・ミックスの修正や見直しに関する記述です。4Pのうち、最も企業側から柔軟に変更できるのはPromotion、つまり販売促進です。例えば、製品を変更するといったら、製造装置やライン等を変更する等検討が必要となります。価格の変更は、収益性に大きな影響が生じてしまいますし、競合との価格競争を考慮する必要が生じます。販売ルートは販売チャネルである他社との契約や関係性に影響を及ぼしかねません。それらに比べると、他社を巻き込んだり、設備の変更の必要がない販売促進は最も柔軟性があります。従って、記述は不適切です。
マーケティング・ミックスの4Cは、4Pと対比させて記憶しましょう。
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