ア 外的な成長誘引は、企業を新たな事業へと参入させる外部環境の条件であるが、主要な既存事業の市場の需要低下という脅威は、新規事業への参入の誘引となりうる。
イ 企業の多角化による効果には、特定の事業の組み合わせで発生する相補効果と、各製品市場分野での需要変動や資源制約に対応し、費用の低下に結びつく相乗効果がある。
ウ 企業の本業や既存事業の市場が成熟・衰退期に入って何らかの新規事業を進める場合、非関連型の多角化は、本業や既存事業の技術が新規事業に適合すると判断した場合に行われる。
エ 事業拡大への誘引と障害は、企業の多角化の形態や将来の収益性の基盤にまで影響するが、非関連型の多角化では、既存事業の市場シェアが新規事業の市場シェアに大きく影響する。
オ 内的な成長誘引は、企業を多角化へと向かわせる企業内部の条件であり、既存事業の資源を最大限転用して相乗効果を期待したいという非関連型多角化に対する希求から生じることが多い。解答:ア
本問では、主に多角化戦略採用の誘因、相補(コンプリメント)効果と相乗(シナジー)効果、多角化戦略の基本分類の知識が問われています。
多角化戦略の誘因には、外的成長誘因と内的成長誘因があります。内外の違いはSWOT分析と同様に、外的なものは、機会(Opportunity)、脅威(Threat)が誘因となり、内的なものは、強み(Strength)、弱み(Weakness)が誘因となります。
相補(コンプリメント)効果は足し算的効果であり、複数の事業の組み合わせにより、各製品事業分野での需要変動(需要変動の平準化)や資源制約(余裕資源の有効活用)に対応し効果を得るものです。
相乗(シナジー)効果は、掛け算的効果であり、情報資源を同時多重利用することで発生する効果です。
関連型多角化と非関連型多角化に大別されます。
関連型多角化は企業の各事業が開発技術、製品用途、流通チャネル、生産技術、管理ノウハウを共有する多角化で、シナジー効果により高い収益性を得る戦略です。
非関連型多角化は極めて一般性の高い経営管理スキルと財務資源以外、事業間の関連性が希薄な多角化です。
これらの知識を踏まえて選択肢を、選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは、適切な記述です。既存の市場の需要低下は脅威(Threat)に該当し、別の市場に進出する誘因となります。
選択肢イは、不適切な記述です。特定の事業の組み合わせが情報資源を同時多重利用するのであれば掛け算的効果である相乗(シナジー)効果が得られます。各製品市場分野での需要変動や資源制約に対応し、費用の低下に結びつくのは相補(コンプリメント)効果です。従って、相補(コンプリメント)効果と相乗(シナジー)効果の説明があべこべになっています。
選択肢ウは不適切な記述です。本業や既存事業の技術が新規事業に適合すると判断した場合に行われるのは関連型多角化です。
選択肢エは不適切な記述です。非関連型多角化は既存事業とは関連性が希薄であり、既存事業の市場シェアは新規事業の市場シェアには影響を及ぼしません。
選択肢オは不適切な記述です。既存事業の資源を最大限転用して相乗効果を得るのは、非関連型多角化ではなく関連型多角化です。
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