企業経営理論 平成23年 第12問 - 組織の設計原則

ピックアップ過去問解説

問題

 企業組織は、一般に分業と協業のシステムとして階層性という特徴を持っている。この組織編成に関する記述として最も適切なものはどれか。


ア イノベーションを目的とした組織においては指揮命令系統の一元性が確保されていなければならないので、階層組織よりはグループ型のフラットな組織が望ましい。

イ 管理者の職務に関する事業の範囲やタイムスパンの責任に応じて、組織は階層を設計する必要がある。

ウ 組織における職務の公式化を進めることによって、管理者の統制範囲(span of control)は狭くなるので、階層数は増える傾向にある。

エ 組織の階層を構成する中間管理職の職務について、責任と権限が公式に一致しなければならない。

オ 不確実性が高い環境下では、分権化を進めるために、階層のないフラットな構造にすることが望ましい。


解答・解説

解答:イ

組織の設計原則に関する問題です。

組織ではいかに分業するかと、分業した仕事をいかに調整して協業するかが重要です。この、分業と協業をする仕組みが組織構造です。

組織を設計するには、5つの設計原則があります。それは、専門化の原則、権限・責任一致の法則、統制範囲の原則、命令一元化の原則、例外の原則です。

これを踏まえて、選択肢を見ていきましょう。

選択肢アでは、イノベーションを目的とした組織が述べられています。

イノベーションを生み出すためには、メンバー間の情報共有や相互作用が重要になるため、フラットな組織の方が望ましいと言えます。ただし、「指揮命令系統の一元性の確保」を優先するのであれば、階層型の組織の方が向いており、イノベーションの目的と矛盾することになります。よって記述は不適切です。

選択肢イですが、管理者の能力には限りがあるため、管理できる事業の範囲に応じて組織を設計する必要があります。これは「統制範囲の原則」の内容です。

また、「タイムスパン」という所が分かりにくかったかもしれませんが、タイムスパンは「期間」を表しているため、「事業の範囲や期間」と読み替えられます。一般に、事業や業務は、時間が立つにつれてその内容が変わったり、増減したりします。こういった、時系列の変化に合わせて、組織の階層を変えていく事も必要になります。

そのため、記述は適切であり、これが正解です。

選択肢ウですが、職務の公式化を進めると、管理者が処理する情報が少なくできるため、管理者の統制範囲は逆に広くなります。よって記述は不適切です。

選択肢エですが、「権限・責任一致の法則」について述べられており、一見すると正しいように見えて悩むところです。ただし、先の選択肢イと比較すると、より選択肢イの方が適切なため、イを正解とすべきです。

この選択肢で不適切な箇所は「公式に」という点です。変化の激しい環境では、組織も柔軟に変化に対応する必要があります。公式に定めた権限・責任の範囲だけで業務を行うと、変化に対応しにくい場合があります。そのため、変化に対応する過程で「非公式」な権限・責任が生じる事があり、必ずしも公式に権限・責任が一致している必要はありません。そのため、記述は不適切となります。

選択肢オですが、不確実性が高い環境下では、分権化による現場優先の対応をする方法以外にも、トップダウンで変革を行うという方法もあります。そのため、必ずしも「階層のないフラットな構造にすることが望ましい」とは言えません。よって記述は不適切です。

本問は、かなり踏み込んで考えないと正解できない問題でした。実際の試験では時間に限りがあるため、消去法によりできるだけ選択肢を絞り込み、さらに絞り込んだものから最も適切に思える選択肢を時間内に選びましょう。



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 1-5 組織の構造 - 組織の設計原則

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