企業経営理論 平成23年 第1問 - ドメイン

ピックアップ過去問解説

問題

 ドメインは全社レベルと事業レベルに分けて考えられるが、ドメインの定義ならびに再定義に関する記述として、最も不適切なものはどれか


ア D.エーベル(Abell)の「顧客層」「顧客機能」「技術」という3次元による事業ドメインの定義では、各次元の「広がり」と「差別化」によってドメインの再定義の選択ができる。
イ 事業ドメインは将来の事業展開をにらんだ研究開発分野のように、企業の活動の成果が外部からは見えず、潜在的な状態にとどまっている範囲も指す。

ウ 自社の製品ラインの範囲で示すような事業ドメインの物理的定義では、事業領域や範囲が狭くなってT.レビット(Levitt)のいう「近視眼的」な定義に陥ってしまうことがしばしば起こる。
エ 全社ドメインの定義によって企業の基本的な性格を確立できるが、製品やサービスで競争者と競う範囲は特定できない。

オ 単一事業を営む場合には製品ラインの広狭にかかわらず事業レベルの定義がそのまま全社レベルの定義となるが、企業環境が変化するためにドメインも一定不変ではない。

解答・解説

解答:エ

ドメインに関する問題です。

本問では、ドメインの定義と再定義について問われています。一部の選択肢に難しい内容が含まれていますが、良く読めば正解の選択肢を見つけることができます。

ドメインは、事業を行う領域を表します。ドメインを定義することで、意思決定の方向性を明確にし、経営資源を集中し、組織を一体化することができます。

では、選択肢を見ていきましょう。

選択肢アは、エーベルによる事業ドメインの定義の内容です。

エーベルは、事業ドメインについて「顧客層」「顧客機能」「技術」という3次元で定義することを提唱しました。顧客層は、対象とする顧客を表します。顧客機能は、顧客に対して提供する機能を表します。技術は、企業の中核となる技術や能力を表します。

ドメインは、環境の変化に適応して再定義していく必要があります。その際、各次元の広がりと差別化を変更することで、ドメインを再定義できます。そのため、記述は適切です。

選択肢イは、潜在的な範囲についての内容です。

事業ドメインは、将来の事業展開をにらんだ研究開発分野など、いまだ潜在的な状態にとどまっている範囲も含んでいます。このような、外部からは見えない潜在的な分野によって、将来の事業の範囲が決まることになります。そのため、記述は適切です。


選択肢ウは、「近視眼的」なドメインに関する内容です。

ドメインの定義方法には、物理的な定義と、機能的な定義があります。例として、かつての米国の鉄道事業では、自身を「鉄道」事業者として物理的に定義していました。その後、自動車や航空機などの産業に押されて衰退してしまいました。もし、ドメインを顧客から見た「運輸業」として機能的に定義していれば、別の事業展開も考えられたかもしれません。


このように、ドメインを物理的に定義した場合、事業展開が制約されてしまいがちです。この現象をマーケティング・マイオピア(近視眼)呼びます。そのため、記述は適切です。


選択肢エは、全社ドメインについての内容です。

ドメインには、企業全体を表す企業ドメインと、事業単位の事業ドメインがあります。

複数の事業を展開している企業では、企業ドメインは、複数の事業ドメインを包括することになります。この場合、企業ドメインは、企業の戦う範囲を限定することに役立ちます。

そのため、記述にある、「製品やサービスで競争者と競う範囲は特定できない」という部分が間違いです。よって、これが正解となります。


選択肢オは、事業ドメインと企業ドメインについての内容です。

単一の事業を営む企業では、企業ドメインと事業ドメインは同じになります。また、単一事業であっても、企業環境が変化した場合は、ドメインの見直しが必要であることは変わりません。そのため、記述は適切です。


ドメインの定義方法や切り口については、再度確認しておきましょう。



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