企業経営理論 平成20年 第2問 - 経営資源と経営戦略

ピックアップ過去問解説

問題

 経営資源と企業の戦略に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

ア ある経営資源を保有しない企業は、すでに保有している企業に比べて、その複製が困難であると、コスト上の不利益を被りやすい。

イ 企業が特定の経営資源を獲得、開発、活用する能力は、企業の歴史的経緯に依存しているので、先行企業は持続的な競争優位を得やすい。

ウ 企業の競争優位と個々の経営資源の関係が不明確になるのは、内部者にとってその経営資源があまりに当然なものであったり、経営資源が個別に分離しにくく一体となって競争優位をつくり出しているからである。

エ 競争優位の源泉である特殊な経営資源の外部からの調達可能性が高く、その調達コストが低いほど、それを調達する企業はコスト上優位になり、競争優位性を長期的に維持できる。

オ 保有する経営資源が希少であることは大事であるが、そのような経営資源は特殊であるため、顧客の価値と合致しないことが起こりやすくなるので、これだけでは競争優位にはつながりにくい。

解答・解説

解答:エ

経営資源と戦略に関する問題です。

経営戦略論の分野では、知識がストレートに問われるよりも、この問題のように概念的な問題が多く出題されます。問題文を読んだだけでは正解がすぐに分かりにくいのが特徴です。

このような問題を解くコツは、具体的な例を当てはめて考えてみることです。この方法に慣れれば、知識が無い問題でもある程度の確率で正解を導くことができるためお勧めです。

では、選択肢を具体例で考えてみましょう。

選択肢アでは、どのような例が思い浮かぶでしょうか?

経営資源といえば、ヒト、モノ、カネ、情報的資源(ノウハウ、ブランドなど)があります。

例えば、「高度な技術ノウハウ」という経営資源を考えてみましょう。 選択肢アに、これを当てはめてみると、次のようになります。

ア 「高度な技術ノウハウ」を保有しない企業は、すでに保有している企業に比べて、「高度な技術ノウハウ」の複製が困難であると、コスト上の不利益を被りやすい。

とても分かりやすくなりました。

簡単に言えば、「高度な技術ノウハウ」の模倣が困難だと不利益を被るということですね。よって、この記述は適切です。

選択肢イにも同じように、「高度な技術ノウハウ」を当てはめてみます。

イ 企業が「高度な技術ノウハウ」を獲得、開発、活用する能力は、企業の歴史的経緯に依存しているので、先行企業は持続的な競争優位を得やすい。

これも、一読して適切であることがわかります。

選択肢ウはどうでしょうか。

ウ 「内部者にとってその経営資源があまりに当然なもの」というのは、たとえば企業文化などがあります。「常に改善を心がける企業文化」という経営資源は、内部の人にとっては当たり前に見えます。

また、「経営資源が個別に分離しにくく一体となって競争優位をつくり出している」という状況は、例えば、企業文化や技術ノウハウなどが一体となって競争優位となっている状況です。トヨタの企業文化と技術ノウハウなどを思い浮かべると良いでしょう。

このような場合は、企業の外部から見ると、「企業の競争優位と個々の経営資源の関係が不明確」になるため、模倣するのが大変難しくなります。 つまり、一部分だけ真似してもうまくいかない、ということになります。

よってこの記述も適切です。

選択肢エで記述されている「外部からの調達可能性が高く、その調達コストが低い」経営資源の例を考えてみましょう。

例えば、汎用的な生産機械や、専門的でない人材などが相当するでしょう。

こういった経営資源が競争優位の源泉である場合、競合他社も簡単に調達、模倣でき、競争優位性はすぐに失われていきます。

よって、選択肢の記述は不適切となるため、これが正解です。

選択肢オの記述も見ておきましょう。

希少な経営資源であっても、顧客の価値と合致しない場合は、競争優位性にはつながりません。

例えば、アパレルメーカーが「特殊な新素材」を開発しても、商品化して顧客に価値を提供することができなければ、競争優位性にはつながらないということです。

ここまで、例を当てはめて正解を導く方法を見てきました。

ちなみに、経営資源の競争優位性を分析するためのフレームワークとして「VRIO分析」というものがあります。知っていた方は、これを念頭に解答して頂いても構いません。

VRIO分析は、持続的な競争優位を築くための、経営資源の4つの要件を表したものです。


1 Value(経済的価値) その経営資源が経済的価値を生み出すか?
2 Rareness(希少性) その経営資源は希少性があるか?
3 Imitability(模倣可能性/模倣困難性) その経営資源は真似されにくいか?
4 Organization(組織能力) その経営資源を生かすための組織・体制があるか?

VRIO分析の説明は、補足として下の講座で解説しています。


学習するには

企業経営理論 リソースベース型の戦略論、競争優位性、VRIO分析

 1-3 事業戦略

→ 上記の講座が含まれる「1次2次合格コース」はこちらから


基礎から着実に
学びたい方におすすめ!

中小企業診断士 1次2次合格コース

中小企業診断士 1次2次合格コース
[2024+2025年度試験対応]

一括 53,900円~
分割例 月々 4,600円 × 12回~

基礎から合格レベルまで着実に学べるストレート合格を目指す方に最適なコースです。重要なポイントを凝縮した「学習マップ」で知識を体系的に整理しながら効率よく学習することができます。詳細はこちら

すべてのコースを見る

中小企業診断士のオンライン講座を、今すぐ無料でお試しできます!

今すぐ使える!3つの特典

  • 最短合格を目指す戦略がわかるセミナー!
    「短期合格の戦略」をいますぐ視聴!
  • 合格者多数輩出講座の初回版を実際に体験!
  • フルカラーだからわかりやすい
    初回版学習マップ&テキストをプレゼント!
さらに
「中小企業診断士 加速合格法」
試験突破のノウハウを凝縮!
学習をいますぐスタートできる
加速合格法をプレゼント!
お申込み後すぐに受講が試せる!
自動契約・更新はありません
お得に受講できる10%クーポン付き