ある美術館では、常設展にはさほど来場者が多くないが、特別展の企画によっては多数の来場者を集めている。特別展の来場者が多いことは収入の面で貢献しているが、入場までに時間が長くかかることや、館内の混雑への苦情が寄せられている。これらを少しでも解消しないと、美術展そのものがだんだん受け入れられなくなってしまうと館長は危機感をいだいている。これに対処するために、いくつかのことを実施しようとしている。これに関して、 最も不適切なものはどれか。
ア 常設展に一定回数以上来場した人に向けて、一般来場者用の展覧時間とは別に特別展の展覧時間を設定する。
イ 展示品の模型を販売するミュージアムショップや、レストランを充実させる。
ウ 特別展の会期中の休館日を廃止したり、展覧時間を夜間まで延長する。
エ 特別展の入場者数を制限する予約制度を取り入れる。
オ 特別展の割引券を配布する場合、その会期中ならいつでも利用できるようにする。
解答:オ
サービスマーケティングに関する問題です。
出題形式は「ショートケース」=短い事例です。サービスの特性と、それに対する対応方法が頭に入っていれば、十分正解を導ける問題です。
今日の問題は、ショートケースの具体的な説明がありますので、説明を読みながら状況を整理してみましょう。
まず、この美術館では常設展と特別展があり、特別展の方の需要が大きいことがわかります。もうすこし具体的にイメージすると、例えば海外の有名画家の特別展を開催すると、とても人気があるので混雑します。しかし特別展以外の常設展の日は、館内が寂しいような状況です。
特別展は入場時間が長くなっており、混雑していて苦情が寄せられています。つまり、需要に供給能力が追いついていない問題があります。 一方、常設展は、来場者が少なく、館長からすれば「特別展の顧客を常設展に移動できたら。。。」と思っているわけです。
ここで、サービスの特性を覚えていた方は、サービスの非貯蔵(消滅性)を思い浮かべることが出来たかもしれません。つまり、サービスは在庫できないので、供給力に限界があるということです。また、これを解消ための対応策として、2つの方向性がありました。
1つは予約制などにより需要を平準化したり、ピーク時から非ピーク時に需要を振り替えることです(需要の調整)。もう1つは、非正規社員を活用したり、セルフサービスを導入することで供給力を向上させる方法です(供給能力の改善)。
こういった対応策を思い浮かべられれば、選択肢の施策の評価が簡単になります。では、選択肢を見ていきましょう。
アは、この施策を取った場合に、顧客(需要)がどう移動するかを考えると良いでしょう。常設展に一定回数以上来場すれば、すいている特別展に招待されるという特典があれば、常設展への来場者を増やし(非ピーク時の需要を増やす)、一般来場者用の閲覧時間の特別展の来場者を減らすことができます(ピーク時の需要を減らす)よって、選択肢は適切です。
イは、美術品の展示というメインのサービスだけでなく、ショップやレストランなどの補完サービスを提供する方法です。混雑している展示エリアとは別の場所で、補完サービスを提供することにより、混雑の解消や、待っている顧客の苦情を減らす効果が期待できます。よって、選択肢は適切です。
ウは、特別展の営業時間を増やすことで、需要の集中を平準化する効果が期待できます。よって、選択肢は適切です。
エは、予約制度により、需要をあらかじめ計画的に平準化することができます。よって、選択肢は適切です。
オは、いつでも利用できる特別展の割引券を配布した場合、より一層特別展の会期中に混雑することが予想されます。 よって、選択肢は不適切です。
この問題では、サービスマーケティングの特性と対応方法を知らなくても解けるかもしれませんが、サービスマーケティングは2次試験でもよく出題される所なので、しっかり覚えるようにしましょう。
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