マーケティング・リサーチに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア アイトラッキング、fMRI(機能的磁気共鳴画像)、GPSなどを通して収集される消費者の意識化されない活動データや言語化が難しい反応データは、消費者が回答するアンケートなどの意識データと併せて分析することで、より正確な調査結果を得ることができる。
イ 観察法、インタビュー法、リード・ユーザー法などの探索的調査では、それぞれ収集データの質が異なるため、原則として、探索的調査は調査目的に対して1つの方法で実施される。
ウ 新製品開発におけるニーズ探索において、実際に対象製品が使用される家庭にビデオを設置し、一定期間、当該製品の使用状況を観察する調査はギャング・サーベイと呼ばれる。
エ 量的研究では、データ収集を進めながら徐々に事象の原因や原因の背後に潜む問題点を精緻化していくといった帰納的な方法で仮説を作り出していくのに対して、質的研究では、過去の研究蓄積や理論に基づいて演繹的に仮説を立案し、実験や調査を通して仮説が検証される。
解答:ア
マーケティング・リサーチに関する出題です。マーケティング・リサーチの様々な手法や特徴について専門的な知識が問われており、やや難易度の高い問題です。
マーケティング・リサーチとは、マーケティングに関わる意思決定のために必要な情報を生み出すプロセスを指します。意思決定に必要な情報が何かを見極め、その情報を正確かつ効率的に収集し、マーケティング戦略の立案に活用します。
マーケティング・リサーチは、一般的に、①リサーチの目的を明確化(課題の設定)、②リサーチ・デザインの策定、③データの収集方法と形式の決定、④サンプリングの策定とデータ収集、⑤データの分析、⑥報告書の作成、といった手順で進められます。
では、選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは適切な記述です。アイトラッキングは、視線の動きを追跡する技術です。店舗の売場やWeb画面において、消費者がどこをどのような順番で、どの程度の時間見ていたかを測定できます。fMRIは、脳の活動を調べる機材です。血流や脳波から消費者が意識していない反応や感情を突きとめることに使われます。GPSは消費者の位置情報が測定できます。小売店舗内の動線調査や商業施設内の回遊行動を記録するために用いられます。これらの方法で収集したデータは、消費者が質問票などで直接回答した意識データと併用することで、より正確な調査結果を得ることが可能となります。
選択肢イは不適切な記述です。探索的調査とは、現状の把握や仮説を導くために行われる調査です。新製品開発では新しいアイデアを得るためによく使われます。消費者がすでに持っているニーズは、インタビュー法やリード・ユーザー法で汲み取ることができますが、新しい製品を見て初めて「こういったものが欲しかった」と消費者が認識する学習ニーズは、これらの調査方法では汲み取ることができません。一方、このような学習ニーズは消費者の無意識な行動を見て心理を探り出す観察法が有効となります。よって、探索的調査は、その目的に応じて複数の方法を組み合わせて実施されます。
選択肢ウは不適切な記述です。ギャング・サーベイとは、消費者を1つの会場に集めて調査票を配布し、一斉に回答してもらう調査方法です。実際に製品が使用される家庭にビデオを設置し、一定期間その製品の使用状況を観察する方法は、エスノグラフィーと呼ばれる行動観察調査の1つです。
選択肢エは不適切な記述です。量的研究とは、理論や仮説の検証をする際に用いる方法で、演繹的なアプローチをします。一方、質的研究とは、概念や思考を理解する際に用いる方法で、帰納的なアプローチをします。選択肢の記述は、それぞれ量的研究と質的研究の説明が逆です。
マーケティング・リサーチは出題頻度の高いテーマです。マーケティング・リサーチの手法について、しっかりと理解を深めておきましょう。
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