賃金 - 中小企業診断士 企業経営理論 令和3年 第26問

ピックアップ過去問解説

問題

 労働基準法における賃金に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 賃金は、通貨で支払わなければならないが、労働組合がない企業について、労働者の過半数を代表する者との書面による協定があれば、使用者は通勤定期券や自社製品等の現物を賃金の一部として支給することができる。

イ 賃金は、通貨で支払わなければならないが、使用者は労働者の同意を得て、労働者が指定する銀行の労働者本人の預金口座へ振り込む方法で支払うことができる。

ウ 労働基準法で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいうが、就業規則に支給条件が明確に定められている結婚手当は賃金となることはない。

エ 労働者が未成年者である場合には、未成年者は独立して賃金を請求することはできず、親権者又は後見人が、未成年者に代わってその賃金を受け取ることとなる。


解答・解説

解答:イ

 労働基準法から賃金に関する出題です。条文を知らなくても、一般常識で正解できる問題です。

労働基準法では、賃金の支払方法について以下の5原則を設けています。

①通貨払いの原則(通貨で払う必要があります)

②直接払いの原則(労働者に直接支払う必要があります)

③全額払いの原則(分割ではなく全額を支払う必要があります)

④毎月1回払いの原則(毎月1回以上、支払う必要があります)

⑤一定期日払いの原則(支払い期日を定める必要があります)

では、選択肢を見ていきましょう。

選択肢アは不適切な記述です。賃金の支払いは、「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払うことができる」(労働基準法第24条)と定められています。労働者の過半数を代表する者との書面による協定によって、賃金の一部を現物で支給することは認められていません。

選択肢イは適切な記述です。使用者は労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について「当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込みによることができる」(労働基準法施行規則第7条の2) と定められています。

選択肢ウは不適切な記述です。賃金とは、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」(労働基準法第11条)とされています。結婚祝金は本来労働の対償ではありませんが、就業規則(慶弔見舞金規程)であらかじめ支給条件や支給額を「臨時の賃金」として明確に定めている場合は、結婚祝金も賃金に該当します(労働基準法第89条4)。

選択肢エは不適切な記述です。未成年者の労働契約において「未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならない」(労働基準法第59条)と定められています。労働者が例え未成年者であっても、独立した人格として賃金を請求する権利があります。

賃金支払いの5原則は、しっかりと内容を覚えておきましょう。


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